スマートウォッチなどウエアラブル端末やIoT機器において、搭載する電子回路の低電力化と使い勝手のよい電源の確保は、機器の価値に直結する大問題である。バッテリーを充電する必要がなく、メンテナンスフリーで利用できるのが理想だ。振動や温度差、光など自然現象から電力を取り出すエネルギーハーベスティング技術は、一見無茶な要求に堪える可能性がある技術の1つだろう。
多くの電源回路や電子回路は、リチウムイオン電池や家庭用交流電源のような、一定以上の出力を安定して供給できる電源を前提に開発されている。エネルギーハーベスティングでは、極めて低電圧の不安定な電力供給しか得られない可能性があるため、相応の電源技術を用意する必要がある。
東京大学 大規模集積システム設計教育研究センター(VDEC) 兼 生産技術研究所 准教授 高宮 真氏に、電源技術開発の側面からのIoT機器やウエアラブル機器をより使いやすいものにするためのポイント、さらにはエネルギーハーベスティング技術の利用シーンを広げるために欠かせない技術について聞いた。
――スマートウォッチのようなウエアラブルな機器が市場に出回るようになりました。こうした機器をより進化させ、広く使われようにするために、どのような技術が求められているのでしょうか。
ネットに接続して活用する機器が、年々増え続けています。こうした機器を利用する場所に注目すると、電子的な仕掛けがどんどん人に近づいてくるというトレンドが見えてきます(図1)。
医療機器を例に採ると、身の回りに置く検査装置などをネットにつなげるIoTから、計測用センサーなどを常に身につけるウエアラブル、そしてペースメーカーや人工内耳など人体に埋め込むインプランタブルへと、技術開発が進んでいるのです。