IoTの利用シーンを広げ、利便性を劇的に高める技術にエネルギーハーベスティングがある。振動や温度差など、どこにでもある自然エネルギーを電力に変換して、電子機器を動かすために使う技術である。IoTシステムの中で、データを収集するエッジ側の機器や端末に応用すれば、バッテリーの交換を気にせず、データを継続的に収集・伝送し続けられる。

音力発電 代表取締役 速水浩平氏
音力発電 代表取締役 速水浩平氏
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 エネルギーハーベスティングの可能性に賭け、10年間にわたって実用化と応用の拡大に向けた技術開発を進めてきたベンチャー企業、それが音力発電である。同社は、自然エネルギーから電力を取り出す発電素子の開発から、この技術の潜在能力を引き出す応用開発まで、エネルギーハーベスティングに関わる広範な技術の開発に取り組んできた。音力発電 代表取締役 速水浩平氏に、エネルギーハーベスティング技術の現在の到達点と、実用化に向けた技術開発の要所を聞いた。

エネルギーハーベスティングはIoT機器向け電源の理想

――IoT機器の利用シーンを拡大する技術として、エネルギーハーベスティングの活用が期待されるようになりました。

 現在、私たちの技術にお問い合せいただくお客様の約8割が、IoT機器への応用を想定しています。これは、エネルギーハーベスティングの利用で、IoT機器をメンテナンスフリーにできる可能性があるからです。頻繁なメンテナンスが必要な機器は、様々な場所への配置に向きません。メンテナンスフリーなIoT機器は、取り扱いが楽であるだけではなく、データを取得する場所の自由度を高め、取得するデータの質と量を向上させます。

  私たちは、「Energy of Things(EoT)」と呼ぶコンセプトを掲げて、モノが置かれているすべての環境からエネルギーを取り出して活用する技術の提供を目指しています。単に、自然エネルギーを電力に変えるだけではなく、その場で無駄なく消費し、新しい価値を持ったサービスを生み出すための技術的な支援をしていきます。