次世代医療データ時代を見据えた製薬企業の新たな挑戦――。武田薬品工業 メディカルアフェアーズ部 主席部員の廣居伸蔵氏は、「医療データベースの現状とその将来性」をテーマとした勉強会(2016年5月19日、メディカル・データ・ビジョンが開催)においてこのような演題で登壇。製薬業界におけるビックデータの現状と今後の課題などについて語った。

武田薬品の廣居氏
武田薬品の廣居氏
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 廣居氏は、製薬ビジネスの中心はこれまで「流通」→「製造」→「創薬」→「育薬」という流れで移ってきたと説明する。最後の「育薬」は、20年ほど前から業界内で使われるようになってきた言葉で、「薬を販売してからも、その薬の効果や副作用などのアウトカムに注目していく必要がある」という考え方に基づくもの。この育薬にビジネスの比重や重要性が高まっていると廣居氏は感じており、製薬業界は今後「モノ作りだけでなく、価値の説明が求められる時代になる」と見ている。

 そもそも、これまでは「臨床試験で有効性や安全性を確認し、厚生労働省からの薬事承認を取得する」というのが、開発型の製薬企業の流れだった。しかし、最近は2013年11月に肥満症治療薬「オブリーン錠」の保険適用が見送られたほか、2015年9月にはC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の薬価収載が1錠8万171.3円と発表された。このような動きから、保険償還や薬価収載に注目することが「製薬企業の新たな挑戦のコアになる」というのが廣居氏の見方だ。

 医療データの利活用については、廣居氏は「リアルワールドデータに接すると、やはり自分たちだけではわからない世界がある」と感じており、「やったからこそ見えてくるものやナレッジは無視できない」と語る。そういった意味でも、学術研究機関やメディカル・データ・ビジョンのような企業と積極的にコラボレーションしていく現状にあるという。