MSDの「ヘルステックプログラム」、いよいよキックオフ

支援先に選定されたベンチャー3社も登壇

2016/06/15 17:30
大下 淳一=日経デジタルヘルス

 「我々はヘルスケアイノベーションを起こそうという志は強いが、これまでは目覚ましい成果をあげられなかった。今こそ、日本のヘルスケア業界に大きなインパクトを与えられると信じている」(MSD 執行役員 経営戦略部門統括の中島理恵氏)――。

MSD 執行役員の中島氏
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 米製薬大手Merck & Co.日本法人のMSDは2016年6月10日、グロービス・キャピタル・パートナーズと共同で手掛ける「ヘルステックプログラム」のメンターリングキックオフミーティングを東京都内で開催した。

 同プログラムはヘルスケアベンチャーの支援を通じ、ICTを活用したヘルスケアビジネスの土壌づくりを狙うもの(関連記事)。事業化に必要な知見やノウハウ、ネットワークをMSDとグロービス・キャピタル・パートナーズがヘルスケアベンチャーに無償で提供する。

約200社の候補から選定

 キックオフミーティングには、支援先に選ばれた3社、「認知症総合支援機構」「ミナカラ」「エクスメディオ」が登壇。各社のビジョンや経営課題、メンターリング(対話を通じた育成)の内容、想定する結果などに関してプレゼンテーションを行った。

 同プログラムでは支援企業の募集を同年1~2月に開始。約200社の候補からまずは23社に絞り、そこからさらに絞り込んだ。支援を決定した3社とは「フォーカスがばっちりあった」(MSD 経営戦略部門 ビジネス・イノベーション・グループ ディレクターの樋渡勝彦氏)。

 挨拶に立ったグロービス・キャピタル・パートナーズ シニア・アソシエイトの福島智史氏は、メンターリングを通じ「数カ月で何らかの成果を出したい。『ここは頑張ってもうまくいかない』といったことを伝えるのも重要な仕事。互いに率直な議論をぶつけられたらいい」と話した。

認知症を“怖くない病気”に

 認知症総合支援機構は、ADAS-Jcogと呼ぶ神経心理検査の手法などを採り入れた、クラウド型の認知症診療支援システムを手掛ける。薬局や歯科医といった身近な場所で軽度認知障害(MCI)や認知症を検査できるようにし、早期発見につなげる。これを通じ「がんが決して治らない病気ではなくなったように、認知症を“怖くない病気”にしたい」(同社 取締役の矢岸進氏)。

 メンターリングでは、薬局で薬剤師がMCIを検査するパイロット試験を実施する。MSDはかねて認知症やMCIの治療薬開発に力を入れており、こうした取り組みとの親和性が高いとにらむ。

キックオフミーティングの様子
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 ミナカラは「患者にとっての医療体験をより身近なものとするために、“薬局のネット化”を目指す」(代表取締役薬剤師の喜納信也氏)。処方薬や市販薬をインターネットで購入できることに加え、薬剤師に相談したり服薬指導が受けられたりするサービスを提供している。

 例えば「おくすり宅配サービス」では、薬剤師が薬を利用者の自宅に届け、対面で服薬指導を受けられる。「服薬・残薬管理サービス」では服薬内容や残薬状況をスマートフォンアプリで一元管理でき、家族との情報共有機能にも近く対応する予定だ。メンターリングでは、患者のQOL改善に向けた“Web to Real”の手法の開発や検証を行う。

MRの視点を採り入れる

 エクスメディオは、医師間(DtoD)の皮膚疾患診療支援サービス「ヒフミル君」を手掛ける。「日本初の無料で使える医師向け臨床支援アプリ」(同社 CTO/Co-Founderの今泉英明氏)で、皮膚科の非専門医がアプリで相談を投げかけると、短時間で専門医からの診療アドバイスが得られる。眼科版の「メミルちゃん」もある。

 同社は「医師同士の互助を支援し、医療を底上げする」(今泉氏)ことを狙い、これらのサービスを提供中。課題は、ユーザー数の拡大や多角的な視点からの製品評価という。

 メンターリングでは、製品やサービスの価値をMSDのMR(医薬情報担当者)が検証する。検討中の新機能についての議論や調査も行う。

 今回のキックオフを受け、各テーマについて2016年6~8月にメンターリングを実施。同年9月までにデモンストレーションの機会(デモデー)を設けたい考えだ。