製薬業界に絡み、「リアルワールド(real world)」という言葉を耳にする機会が増えている。リアルワールドエビデンス(real world evidence)やリアルワールドデータ(real world data)など、呼び名は違えど意味するところはほぼ同じだ。

講演する井上氏
講演する井上氏
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 新薬開発のための臨床試験(治験)は、条件のそろった限られた患者集団を対象とする。ノイズを排除し、従来の薬との差分を浮き彫りにすることが狙いだからだ。ところが、薬が実際に発売された後、実臨床においてはさまざまな背景を持つ患者にその薬が投与される。処方の実態や治療効果、副作用などを、実臨床で得られるデータから検証する。こうした取り組みを指す言葉が、リアルワールドデータ/エビデンスである。

 製薬大手、バイエル薬品の担当者はリアルワールドデータ/エビデンスの重要性をこう指摘する。「開発試験(治験)の次のステップとして、さまざまなデザインの実臨床研究を行い、安全性や有効性の一貫性を確認する。こうした作業が、製薬企業にとって重要性を増している。処方に当たって気をつけなければならないポピュレーション(患者集団)を実臨床で明らかにすることで、我々が販売する薬を安心して使ってもらえるようになる」。

 こうしたリアルワールドデータ/エビデンスの重要性を、現場の臨床医はどのように捉えているのか。バイエル薬品は2016年6月8日、こんなテーマに関して理解を深める機会を提供する勉強会「シリーズ リアルワールド(実臨床)エビデンスと医療」の第1回を東京都内で開催した。循環器内科医で富山県済生会富山病院 院長・富山大学 名誉教授の井上博氏が登壇。「改めてリアルワールド・エビデンスの重要性を理解しませんか?」と題して講演した。