何か新しいことに取り組むために「特区」をつくることの意義には、2つの側面があると考えています。一つは、規制緩和です。インフラや人材に関して、すべての地域を統一基準でやるのは難しいので、それを補うために規制を緩める。もう一つは、今は存在しない新たな状況をつくりだすための挑戦の場にするということです(関連記事)。

厚生労働省 医政局 地域医療計画課課長の佐々木健氏(写真:加藤康、以下同)
厚生労働省 医政局 地域医療計画課課長の佐々木健氏(写真:加藤康、以下同)
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 ただし、その取り組みにどのようなゴールを設定するのか、目指すところがはっきりしなければ、官庁としても規制緩和などの面から協力することは難しいというのが本音です。「ここに困っている」ということを明確にしてもらわないと、知恵を絞ることができないのです。目指す姿さえ明確なら、法律を変えたり、規則を変えたり、通知を出して解釈を変えるといったように、打つ手はいろいろと考えられます。

 誰を受益者に設定し、成果をどのような指標で測るかがまずは重要でしょう。例えば、費用対効果という指標が、評価と一体になっていなければならないと思います。そうした評価指標がきちんと組み込まれていなければ、せっかくの取り組みも「事例集」で終わってしまうでしょう。

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 特区での実証事業も活用しながら、課題先進国である日本の課題をこの先、どのように乗り越えていくか。社会保障制度の良いところは維持しながら、どのような改良が必要かを地域と国の両方のレベルで考えなくてはなりません。実証事業を評価した結果、ICTなどの新しい技術を活用することでその改良を実現できるなら、妨げとなる規制は見直していけばいい。足らざるところがあれば、それをどう応援し補うかを我々としても考えます。

 これは厚生労働省を代表しての発言ではありませんが、規制の緩和や見直しの対象は特区にこだわる必要はないでしょう。全国で進めていくべきものがあればそうすれば良いと、私は考えています。(談)