欧州の自動車業界が電源電圧DC48Vのマイルドハイブリッドシステムの導入したクルマの市場投入を加速し、技術の標準化に向けて動き出している。この動きは自動車以外の応用機器にも確実にインパクトを及ぼす。

大分大学 エネルギーと暮らしの総合研究センター 西嶋仁浩氏
大分大学 エネルギーと暮らしの総合研究センター 西嶋仁浩氏

 48Vシステムは、トヨタのプリウスのようなストロングハイブリッドシステムのバッテリー電圧(約200V)よりもはるかに低電圧である。その一方、自動車用補機向けで一般的な鉛蓄電池のDC12Vよりも高電圧だ。

 このため、比較的安全に扱えるうえに、鉛蓄電池向けに比べてより出力が大きなアクチュエーターや負荷が大きい電子機器への給電に適する。データセンターのサーバー、産業機器やロボットなど、これから急激に成長していく自動車以外の応用市場で、そのメリットを生かせる可能性が高い。

 48Vシステムのメリットはこれまでもよく知られていたが、低コストかつ効果的に活用するためのエコシステムが整っておらず、実際の用途は限られていた。48Vシステムを構成するための半導体や電子部品は、長い間幅広い用途で実績がある12Vシステム用に比べて選択肢が限られ、価格も高価だったのだ。

 欧州の自動車業界が推進する48Vシステム関連市場の育成は、こうした閉塞感に風穴を開ける可能性がある。48Vシステムに向けた数々のスイッチング電源技術の開発で実績を持つ大分大学 エネルギーと暮らしの総合研究センターの西嶋仁浩氏に、欧州発の48Vシステム標準化のインパクトと、より効果的な活用に向けた技術開発の動向について聞いた。

――欧州の自動車業界による48V車の市場投入が活発化しています。こうした動きをどのように見ていますか。

 欧州の自動車業界は、48Vシステムの仕様を「LV148」として標準化し、企業横断的に様々な車種への導入を容易にする戦略を採っています。効率が高く、魅力的だが、1台1台が作り込んで作られている日本のストロングハイブリッド車への対抗策として、なかなかうまい戦略だなと感じています。、

 標準化した48Vシステムを用いる各自動車メーカーの製品戦略も、よく練られているように見えます。独Audi社は、高級車である「SQ7」でターボラグがない電動スーパーチャージャーの搭載のために48Vシステムを採用し、クルマの付加価値を高めています。高級車から48Vシステム投入の口火を切れば、マイルドハイブリッド車への展開に欠かせない低コスト化に向けた筋道がつけやすくなります。スウェーデンVolvo社が「V40」に、独Volkswagen社が「Golf 8」、Audi社が「Q8」にマイルドハイブリッドを投入する予定と聞きます。好ましい流れが出来ているように見えます。