クルマに搭載する電装品を駆動する電圧を従来の12Vから48Vへと高めた48V車の市場投入が、いよいよ始まった。

 システム電圧を高めると、ベルト駆動のオルタネーター/モーターを使って電力回生やアシスト効果を高めるマイルドハイブリッド車が実現可能になる。日本市場でおなじみの、「プリウス」などストロングハイブリッド車に比べて、低い追加コストで燃費改善ができる利点がある。現在、燃費規制が厳しく強化されている欧州を中心に、完成車メーカーと電装品のサプライヤーが一丸となって、その普及に取り組んでいる。

ローランドベルガ− パートナー 貝瀬 斉氏
ローランドベルガ− パートナー 貝瀬 斉氏

 日本では、ストロングハイブリッド車や電気自動車(EV)が市場の中で一定の地位を占めており、48V車の位置付けとそれを巡る自動車業界の動きが見えにくい。しかし、日本の自動車業界が今後も世界市場でビジネスをしていく上で、48V車を無視できないのは明らかだ。世界市場における48V車の現状の位置付けや、海外の自動車業界の取り組みについて、ローランドベルガ− パートナーの貝瀬 斉氏に最新の動きを聞いた。

――自動車メーカー各社の48V車投入の動きから、世界市場での普及の兆しは見えますか。

 2016年に、仏Renault社と独Audi社が48V車に対応したモデルを欧州市場に投入しています。とはいえ、これを契機に48V車が一気に主流になっていくという勢いは感じません。2017年から2020年に掛けて、着実に対応モデルが増えていく、Renault社とAudi社の動きはそのキッカケになると見ています。独Volkswagenグループや独BMW社は、将来、電気自動車(EV)を投入していく方針を打ち出しています。こうした中で当面は、48V車やプラグインハイブリッド車などさまざまなパワートレーンが混在した市場が形成されていくでしょう。EVの普及の度合いは、48V車の普及に影響を与えるでしょう。

 48V車に関する動きでは世界的に見ても欧州メーカーが突出しています。Mercedes-Benz、Audi、BMWのいわゆるジャーマン3は、商品ラインナップの中に48V車を設定すると既に明言しています。特にBMWは、2025年までに全車種で複数のパワートレーンの中から48V対応のマイルドハイブリッド車を選択できるようにすると宣言しています。消費者の目には、48V車が選択肢のうちの1つとしてハッキリと映るでしょう。