欧州でシステム電圧48Vの自動車の市場投入が本格化し始めた。これに先駆けること実に約15年、2001年にトヨタ自動車はシステム電圧42Vを採用した「クラウン マイルドハイブリッド」を発売している。現在の48V車向け技術を先取りし、その商品性に対する知見を他社よりも早くから蓄積してきたのである。

名古屋大学 大学院工学研究科 非常勤講師 寺谷達夫氏
名古屋大学 大学院工学研究科 非常勤講師 寺谷達夫氏

 日本の自動車業界は現在、電気自動車、ストロングハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、そしてマイルドハイブリッド車と、多様な電動パワートレーンのクルマを扱っている。今後、48V車に取り組むにあたり、付加価値の創出と市場投入の見極めが必要になる。

 42V対応技術の標準化とクラウン マイルドハイブリッドの開発に携わった、名古屋大学 非常勤講師の寺谷達夫氏に、世界に先駆けて42V車を発売するに至った経緯、その後の自動車業界を取り巻く環境の変化、さらには今後48V車の普及を加速させるためのポイントについて聞いた。

――トヨタは今から15年以上前の2001年にシステム電圧42Vの「クラウンマイルドハイブリッド」を投入しています。当時と、48V車の投入が始まった現在ではどのような違いがありますか。

 まず、欧州企業の本気度が違います。欧州の自動車メーカー各社は、かなり戦略的に取り組んでいるように感じます。さらに自動車メーカーとティア1の部品メーカー、半導体メーカーの間での技術の擦り合わせも進んでおり、市場拡大に向けてまさに業界一丸となって取り組んでいる印象です。

 時代の移り変わりは早い。トヨタは高システム電圧車の実用化では先んじましたが、情勢は一変し、今は日本と欧州の立場が逆転しています。今、欧州の自動車業界が48V車の攻勢に転じられたのは、部品メーカーである独Bosch社、仏Valeo社、半導体メーカーである独Infineon Technologies社などが、地道に技術開発を継続してきた成果だと思います。

 その一方で日本のほとんどの自動車メーカーは2000年代後半にストロングハイブリッドや電気自動車など極めて高い電圧を扱うための技術開発にリソースを割きました。このため今になってみれば、48V車では出遅れているように見えてしまうかもしれません。しかし、42V車向けの技術的な知見や関連技術のほとんどが48V社の開発にも活用できるわけで、ゴーサインさえ出れば一気に市場投入できるポテンシャルがあると見ています。