国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)は産業技術総合研究所(産総研)と共同で、AI(人工知能)やIoT関連の技術を生かして土砂災害の発生や予兆を検知する次世代型センサーを開発する。その特徴は「正早安楽」だ。

写真●広島市安佐南区で2014年8月に発生した土石流では、渓流を猛スピードで下った土砂が住宅地に達した。写真は応急復旧工事の様子
写真●広島市安佐南区で2014年8月に発生した土石流では、渓流を猛スピードで下った土砂が住宅地に達した。写真は応急復旧工事の様子
(出所:日経アーキテクチュア)
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 次世代型センサーでは、土石流の音や振動を捉えたり、地すべりが発生する前に斜面の勾配が変化する様子を検知したりする。開発期間は2016年12月から18年3月末までだ。

 土石流の検知には、発災の懸念がある渓流などにワイヤを張っておき、移動や切断などを検出して警報を鳴らす「ワイヤセンサー」を使用することが多い。しかし、一度発災を検知するとワイヤを張り直す手間が掛かるなどの課題があった。

 土石流の流下に伴う地盤の振動を検知する振動センサーもあるが、発災を正確に検知するための調整が難しい。感度を低くしすぎると見逃す恐れがある一方、高くしすぎると道路を走る車の振動や、付近の工事の振動で誤作動を起こしてしまうからだ。

 また、振動センサーは1基当たり100万円ほどと高価なうえ、サイズがひと抱えほどもある。設置するにはコンクリートの台座を施工する必要があるなど、険しい山中に多く配備するには実用的ではなかった。

 そこで国総研などは、従来よりも検知精度を高めつつ、小型で安価なセンサーの実用化を目指すことにした。素早く簡単に設置できるようにして、監視体制を早期に構築し、発生の見逃しなどを防ぐ。