福島第1原子力発電所の廃炉を進める上で、「稼ぐ力」が求められている東京電力ホールディングス(HD)。水力発電用ダムの発電量を増やすため、洪水時の放流操作にAI(人工知能)を活用する方針だ。再生可能エネルギーの導入拡大に役立てる。

 同社は2017年2月、理化学研究所と共同研究に取り組むと発表した。理研が持つ気象などのシミュレーション技術と、東京電力HDがこれまでに蓄積してきた観測データを組み合わせ、雨量や河川流量の予測精度を高める。

図●理化学研究所が開発した気象予測モデルのイメージ。気象レーダーによる高解像度の観測データを使って、数キロメートルから数千キロメートルの範囲に発生する積乱雲の細かな挙動を推定できる
図●理化学研究所が開発した気象予測モデルのイメージ。気象レーダーによる高解像度の観測データを使って、数キロメートルから数千キロメートルの範囲に発生する積乱雲の細かな挙動を推定できる
(出所:理化学研究所)
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 その上で、予測結果を基にダムからの放流量や放流時間を最適化し、下流域の安全性を確保しながら水力による発電量の増加を目指す構想だ。

 共同研究では、長野県の犀川に保有する生坂(いくさか)、平、水内(みのち)、笹平、小田切の5つの水力発電所を対象とする。最大出力は合計9万9800kWに上る。

図●東京電力ホールディングスが長野県内に保有する5つの発電所が共同研究の対象に。同社や国の雨量計の観測データなどを、気象予測に役立てる
図●東京電力ホールディングスが長野県内に保有する5つの発電所が共同研究の対象に。同社や国の雨量計の観測データなどを、気象予測に役立てる
(出所:東京電力ホールディングス)
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