国内の道路延長は合計120万kmを超える。おびただしい面積に膨れ上がった舗装の大半を管理するのが市町村だ。AI(人工知能)を用いた舗装の点検技術は、予算や技術力の不足に悩む市町村の強力な助っ人になるかもしれない。舗装会社の福田道路(新潟市)にNEC、NTTコムウェア――。多様なプレーヤーが「舗装点検市場」を虎視眈々と狙っている。

図●日本の道路種別と管理者別の延長。2013年4月時点
図●日本の道路種別と管理者別の延長。2013年4月時点
(出所:国土交通省)
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 通行車両の荷重を直接受ける舗装は傷みやすい部材だ。損傷を放置するとクレームにつながるだけでなく、事故を引き起こす恐れがあるので、こまめな修繕が欠かせない。限られた予算で舗装の維持・修繕や更新を計画的に進めるには、舗装の状態を適切に把握する必要がある。

 高速道路や国道では、「路面性状測定車」と呼ぶ特殊車両を用いて舗装のひび割れとわだち掘れ(路面に発生した筋のような凹凸)、平たん性を調査し、MCI(Maintenance Control Index)という指数を算出。修繕や打ち換え(傷んだ舗装を撤去して新たに舗装すること)の必要性を判断する根拠としている。

図●路面性状測定車の構成
図●路面性状測定車の構成
(出所:国土交通省)
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 ただし、路面性状測定車による調査は費用がかさむうえ、時間もかかる。財政の厳しい自治体は、おいそれと実施できない。高速道路や国道ほど高度な管理が求められない市町村の生活道路などでは、人手をかけずに安く点検したいというニーズが強い。そこで脚光を浴びているのが、AIを用いた舗装の点検システムだ。

 適用するのは、ディープラーニング(深層学習)と呼ぶAI。コンピューターに人間のような学習能力を持たせる機械学習の一種だ。脳の神経回路を模した情報処理システムであるニューラルネットワークを幾層にも構築し、大量のデータを学ばせる。すると、システムが自らデータの特徴を学び、未知のデータを認識・分類できるようになる。