建設・インフラの現場で、IT活用による産業革命が始まった。建設や維持管理の分野で、インフラの実務者が大きな期待を寄せているのがAI(人工知能)だ。

 日経BP社では、建築媒体「日経アーキテクチュア」や土木媒体「日経コンストラクション」の読者である建築・土木の実務者に対して、アンケート調査を実施。インフラの建設や維持管理の領域において、今後、どのような先端技術を役立てたいのかを尋ねるとともに、その利用分野や課題などを聞いた。

 その結果、回答を寄せた386人のうち、147人(38.1%)と最も多い回答者が、「その他」を含む20分野の先端技術のなかから「AI」を選んだ。これに「ドローン」(37%)、「3Dプリンター」(29.5%)が続いた。

Q1:今後、建設・維持管理などの業務で役立てたい先端技術は?
Q1:今後、建設・維持管理などの業務で役立てたい先端技術は?
調査は2017年5月9日から5月17日にかけてインターネットを通じて実施した。調査対象者は建築媒体「日経アーキテクチュア」の雑誌・ウェブ読者と、土木媒体「日経コンストラクション」の雑誌・ウェブ読者。回答のうち、建築、住宅、土木の業務に従事する386人のデータを分析した。日経BPコンサルティングの協力を得た(調査:日経BP社)
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 アンケートでは、「その他」を除く19分野の先端技術のうち、特に重要度が高いと考える技術を3つまでに絞り込んでもらい、その利用意向などを詳しく尋ねた。AIを選んだ実務者は79人に及び、このうち建築・住宅の実務者が45人、土木の実務者が34人だった。

 これらの回答者には、AIを今後役立てたいと考える工種や構造物を確認した。すると、鉄筋コンクリート造建物を選ぶ回答が32.9%と最大で、次いで土工事を選ぶ回答者が26.6%となった。土工事については、国土交通省によるi-Construction(アイ・コンストラクション)の取り組みが始まり、建設現場での機械の自動運転といった取り組みが散見されてきたことも、票を集めた要因だとみられる。

Q2:AIを活用した技術を役立てたい工種(構造物)は?
Q2:AIを活用した技術を役立てたい工種(構造物)は?
Q1で選んだ先端技術のうち、利用意向が高い技術として「AI」を選んだ79人が回答した(調査:日経BP社)
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 さらに調査では、AI活用に期待する効果も尋ねた。その結果、最も期待が大きかったのは時間短縮で、75.9%に達した。長時間労働を強いる”ブラック職場”が社会問題としてクローズアップされたり、大量の施設点検や災害復興事業・五輪事業といった短工期の事業が重なったりしていることが、一因となっていると推定できる。

 時間短縮以外で期待する効果については、人員の削減が64.6%、コスト削減が59.5%、技術者の業務軽減(判断、意思決定など)が54.4%で続いている。

Q3:AIを活用した技術に期待する効果は?
Q3:AIを活用した技術に期待する効果は?
Q2に回答した79人が答えた(調査:日経BP社)
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