「テレビは世界への窓。家庭のエンターテインメントの中心だ」

 韓国Samsung Electronics社の欧州法人でディスプレー関連部門のVice Presidentを務めるMichael Zöller氏は、ポルトガルの首都リスボンで2017年4月に開催された報道関係者向けイベント「IFA Global Press Conference(IFA GPC) 2017」(主催:ドイツMesse Berlin社)の講演で、こう切り出し、“新しい”スタイルの液晶テレビを披露した。

Samsung社の壁掛けテレビ「The Frame」。左上が大画面テレビ。他は普通の絵画
Samsung社の壁掛けテレビ「The Frame」。左上が大画面テレビ。他は普通の絵画
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 商品ブランドの名称は「The Frame」。2017年5月に欧州で発売する。想定価格は55型で2199ユーロ。最大の特徴は、デザイン性を高めたことだ。木材の額縁のような外枠(ベゼル)を採用。壁に掛けたり、絵画を描くときのイーゼルのような台に載せたりして使うことを想定した製品だ。テレビを視聴しない時は「アートモード」で絵画を表示できる。内蔵センサーで周囲の明るさや照明の色温度に合わせて画面の表示を自動で調整する機能も備えている。

 正直なところ、デジャブ(既視感)を感じる製品ではある。壁掛けテレビは、かねてテレビメーカーが目指す究極の利用スタイルの1つ。これまで何度も普及を目指す同様の取り組みはあったが、なかなか市場拡大には至っていない。世界的にテレビ離れが語られるなか、登場してきた苦肉の策。Samsung社の壁掛けテレビは、そう見えなくもない。

 特に日本から見ると、なおさらだろう。世界のテレビ市場における国内家電メーカーの存在感は薄まる一方で、景気のいい話は聞こえてこない。では、「家電の王様」「リビングルームの主役」と呼ばれたテレビは本当に死んだのか。