「没入感を高めた音(Immersive Sound)が、次の革新をもたらす。テクノロジー企業として、感情を揺るがす体験を創造していく」

 ドイツのオーディオ機器メーカーSennheiser社をCEO(最高経営責任者)として率いるAndreas Sennheiser氏は、音響技術が切り開く新しい未来への期待をこう表現した。ポルトガルの首都リスボンで2017年4月に開催された報道関係者向けイベント「IFA Global Press Conference(IFA GPC) 2017」(主催:ドイツMesse Berlin社)での一幕だ。

Sennheiser社 CEOのAndreas Sennheiser氏。音響機器の老舗メーカーは、立体音響技術の開発を推進している
Sennheiser社 CEOのAndreas Sennheiser氏。音響機器の老舗メーカーは、立体音響技術の開発を推進している

スマホで手軽に立体音響を録音

 Sennheiser社は1945年創業の老舗。ヘッドホンやマイクロホンは音楽や映像の制作現場で広く使われ、プロフェッショナル用途での評価は高い。その同社が今、力を入れている技術開発分野が3次元(3D)の立体音響だ。水平・垂直方向の360度で立体的に音を録音し、それを再生する技術である。同社は「AMBEO」という技術ブランドを冠し、この技術の普及を強力に推進している。

360度の立体音響の録音に使えるSennheiser社のマイクロホン「AMBEO VR Mic」
360度の立体音響の録音に使えるSennheiser社のマイクロホン「AMBEO VR Mic」

 例えば、4つのマイクロホンユニットを組み合わせて1本のマイクロホンを構成し、360度の立体音響の録音に使える「AMBEO VR Mic」。立体音響を実現する技術の一種であるAmbisonics方式を用いたマイクロホンだ。2017年2月には欧米に続き、日本でも発売した。

 今回のIFA GPCでSennheiser氏は、バイノーラル録音機能付きのヘッドホン「AMBEO SMART HEADSET」を2017年後半に欧州で発売することを明らかにした。バイノーラル録音は、人間の頭部(耳)と同等の環境で音を拾って音を記録し、それを聞いた人があたかもその場にいるかに感じる立体音響を再現する技術だ。