1.標準化が行われる背景
1990年代後半の無線LANの研究、開発、標準化の急速な進展及びパーソナルコンピュータに対する周辺機器の多様化に伴い、無線LANのようにAPを介することなく直接通信により、簡単に接続する需要が高まってきた。これが無線PANである。この普及促進にも、研究、開発以外に標準化が必要になり、1999年にIEEE802.11から独立する形でIEEE 802.15 ワーキンググループ(以下IEEE 802.15)が立ち上がった。
2.無線PAN の標準化
IEEE 802.15 における主な標準化は表1にまとめる。短距離無線通信のアプリケーションイメージは様々であるため、IEEE 802.11 のように、全て添字が英語のプロジェクトだけではなく、.15の後に更に数字を付けて、カテゴリー分けをはっきりし、その後修正が必要である場合は、更に英語の添字を付けて追加の標準化を行う。表1において、802.15の標準化は大きく分けて四つに分類できる。表2に示すように最大伝送速度が数Mbit/s程度の低速無線PAN、最大伝送速度が10 Mbit/s 以上の高速無線PAN、アプリケーションに特化した無線PAN、両方のPANに利用できる共通技術である。
低速無線PANの例として、Bluetoothとして商用化されている802.15.1、及びWi-SUN、ZigBeeの名前で商用化されている802.15.4が挙げられる。高速無線PAN の例として、UWB(Ultra-wideband)の名前で知られる802.15.3が挙げられる。アプリケーションに特化した無線PANはBody Area Network(BAN)で知られる802.15.6、可視光通信(VLC:Visible LightCommunication)で知られる802.15.7等が挙げられる。共通技術の標準化としてはメッシュネットワークの方式を標準化した802.15.5、Key Management Protocolを標準化する802.15.9、データリンク層でルーチングを行う802.15.10等が挙げられる。この中でも実際に大きなビジネスにつながっているのは低速無線PANである。また、注目すべき標準化は、高速無線PANである。