本記事は、電子情報通信学会発行の機関誌『電子情報通信学会誌』Vol.100 No.2 pp.92-97に掲載された「画像処理/学習、医療アプリケーションへの応用-大腸NBI拡大内視鏡画像のリアルタイム診断支援システム-」の抜粋です。全文を閲覧するには電子情報通信学会の会員登録が必要です。会員登録に関して詳しくはこちらから(電子情報通信学会の「入会のページ」へのリンク)。全文を閲覧するにはこちらから(電子情報通信学会のホームページ内、当該記事へのリンク)。『電子情報通信学会誌』の最新号はこちら(最新号目次へのリンク)。電子情報通信学会の検索システムはこちら(「I-Scover」へのリンク)。

1.大腸内視鏡診断支援

 近年大腸がん罹患者数は世界的に増加の一途をたどっている(1)。大腸がんは早期段階での発見、治療によりほぼ完治可能な病気でもあるが、大腸がんの最も一般的な診断方法である内視鏡検査においては、医師は大腸内壁の見た目の構造から腫瘍の有無や深達度を診断しなければならず、高い専門性が必要となり診断できる医師が限られてくる。そこで、症状を定量的に評価し、医師の診断を「セカンドオピニオン」として支援する診断支援(CAD : Computer-Aided Diagnosis)システムが求められている。これまでの検査方法の一つとして狭帯域光観察(NBI : Narrow Band Imaging)システムを用いた大腸拡大内視鏡検査が行われている(図1)。この検査では、図2 に示す正常粘膜、腺腫、粘膜下層多量浸潤がん・進行がんとの関連性が証明されている広島大学NBI 拡大所見分類(2)に基づき識別を行う。我々は、この分類に基づく大腸NBI 拡大内視鏡画像診断支援ソフトウェアシステム(3)、 (4)を開発している。現在、内視鏡画像においても高精細化が進み、フルハイビジョン画像(1,920×1,080pixel)が一般的になっており、医療現場からは、最低でも①フレームレートが1~5frame/s 以上、②レイテンシ(画像表示タイムラグ)が1s以下、③腫瘍(タイプB、C)・非腫瘍(タイプA)の識別精度90%以上の性能が要求されている。

図1 大腸NBI 拡大内視鏡画像例
図1 大腸NBI 拡大内視鏡画像例
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図2 NBI 拡大所見分類<sup>(2)</sup>
図2 NBI 拡大所見分類(2)
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 そのため、リアルタイム診断支援には、ハードウェア実装により、高速化と高精度の両方を実現する必要がある。本稿では、特にフルハイビジョン画像を取り扱う際に処理時間が問題となる特徴量抽出のFPGA 実装による高速化について紹介する(5)。特徴量変換とタイプ識別のFPGA 実装の詳細については、文献(6)、 (7)で紹介している。