アムテックと応用科学研究所は5軸制御マシニングセンター(MC)による加工を前提に、歯形を見直し、生産性や精度を高めたスパイラルベベルギア(まがりばかさ歯車)「IPベベルギア」を開発した。従来のスパイラルベベルギアは歯切り盤での製造を前提としており、MC加工では生産性や精度に課題があった。MC加工を前提に歯形を再設計した結果、生産性の問題を解決したほか、新たな可能性も見えてきた。

 アムテック(本社大阪市)と応用科学研究所が考案した「IP ベベルギア(Invo Planar bevel gear)」は、歯切り盤を使わず、マシニングセンター(MC)での加工を前提に設計された新しい形状のスパイラルベベルギア(まがりばかさ歯車)である。スパイラルベベルギアは自動車のデファレンシャルギアなど、出力の軸方向を90度変換する用途に主に使われる歯車。歯切り盤と呼ぶ専用製造装置で大量生産されているが、大型船舶向けなどでMCを使った少量生産のニーズがあった。だが、歯切り盤を前提とした従来の形状はMCでの加工が難しく、生産性や精度に問題があった。

 具体的には皿形砥石を使用できないため、歯面にうろこ模様が生じてしまい、マイクロチッピングが発生する要因となっていた。また、加工時に同じ部位に何度も工具を通過させる必要があり、生産性の低下が問題になっていた(前回記事参照)。

歯車形状を工夫し、マシニングセンターでの一括加工を可能に

 そこで登場するのがIPベベルギアである。前述の2つの課題を解決するものであり、マイクロチッピングの抑制、すなわち研削加工における高精度化と同時に、加工性の向上も実現する。具体的には皿形砥石を使えるようにした。円柱形砥石に比べて加工面の品質を向上させ、生産性を高められる。

 改良のポイントは大歯車の歯すじと歯形を直線で構成したこと。つまり、歯面を平面にして荒加工においては切削スピードを高め、研削時にも皿形砥石を使えるようにした(図3)。

図3 IPベベルギアの大歯車を加工している様子
図3 IPベベルギアの大歯車を加工している様子
歯形と歯すじが直線状になっており、5軸マシニングセンターで加工し、皿形砥石で研削できる。
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 一方、小歯車の歯形は大歯車のカウンターラックを円周方向に運動させて生成する。歯形は直線にはならないが、転がり円半径を適切に設定して歯の根元が細くなるアンダーカットの発生を抑える。小歯車はアンダーカットがなければ、皿形砥石での加工が可能になる(図4)。

図4 IPベベルギアの小歯車を加工している様子
図4 IPベベルギアの小歯車を加工している様子
転がり円半径を調整することで、アンダーカットをなくしている。このため、皿形砥石による研削で仕上げられる。
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 このような改良で、IPベベルギアはマシニングセンターでの一括加工を可能にした。従来の球面インボリュート歯形の歯車をマシニングセンターで加工する場合と比較して工程を単純にできて生産性が大幅に向上したと同時に、マイクロチッピング発生などの不具合も防げる。