動力、特に回転エネルギーを伝達する重要な機械要素である歯車は、長い年月をかけて設計および製造のノウハウが蓄積されてきた。耐久性や稼働時の騒音、伝達効率を最適化するための設計技術と、その形状を効率よく低コストで加工する技術とがそれぞれ進化してきた。
ただしこれまでの進化は、同形状の歯車の大量生産を前提としていた。すなわち歯切り盤と呼ばれる製造装置の機能に形状を依存せざるを得なかった。一方で昨今、マスカスタマイゼーションが重視されるようになるなど、少量多品種生産のニーズは高まっており、大量生産という前提は必ずしも成り立たなくなりつつある現状がある。
アムテック(本社大阪市)と応用科学研究所が考案した新しい形状のスパイラルベベルギア(まがりばかさ歯車)である「IP ベベルギア(Invo Planar bevel gear)」が注目を集めるのはこうした背景があるからだ。歯切り盤を使わず、マシニングセンター(MC)での加工を前提に設計されており、「既存の歯形でMC加工するのに比べて、生産性は10倍になる」(アムテック代表取締役の上田昭夫氏)という。日本機械学会の「歯車装置に対する設計・製造及び評価に関する革新的技術探求の調査研究分科会(RC268)」は、この歯形の歯車を試作し、性能評価を実施した(図1)。