医療のさまざまな領域での活用研究が進められ、実証段階でその有効性が示されている人工知能(AI)――。介護現場においても人工知能を用いて介護の質の担保や介護環境の改善に取り組もうという動きが始まっている(関連記事)

 北海道内で介護サービス事業を展開する一方、全国各地で介護・福祉のスクールを運営して介護人材の育成に取り組む札幌市のさくらコミュニティサービスもその1つ。地元ベンチャー企業や大学と共同で、人工知能を利用した介護計画(個別支援計画)の作成支援システムを中核とする「日本KAIGOプラットフォーム」の開発に乗り出した。経済産業省の「商業・サービス競争力強化連携支援事業に採択され、2019年度に全国の介護事業者向けにサービス提供を予定している。

計画作成に9.5~11.5時間もかかる

 要介護認定を受けた高齢者が介護保険サービスを利用する際に必要となるのが、「ケアプラン」である。主に居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、利用者の健康状態、生活状況や家庭環境をアセスメントした上で、本人や家族と相談しながらサービスの組み合わせと支援目標を設定する。

 介護サービス事業所は、その支援目標を達成するための具体的な方法を明確にするため、ケアプランを基に個別のサービス計画を作成する。これが「個別支援計画」で、介護保健施設や小規模多機能居宅サービス事業所など各介護サービス事業所に所属する計画作成担当者がそれぞれ作成している。

さくらコミュニティサービス 代表取締役の中元秀昭氏
さくらコミュニティサービス 代表取締役の中元秀昭氏
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 この個別の介護計画の作成には、相当な時間が費やされていることと、計画作成担当者のスキルにより介護計画の質にばらつき生じることが課題となっている。利用者1人当たりの計画作成に、グループホームの場合で3~7時間、小規模多機能型ホームで9.5~11.5時間が費やされているという。「計画作成だけを担当することはなく、日常の介護業務を行いながら作成・更新作業を行うのは、かなりの負担になっている」と、さくらコミュニティサービス代表取締役の中元秀昭氏は語る。

 「現場スタッフの記録業務や介護計画作成の負担軽減を図ることで生じた時間を、個々の利用者のより良い介護に充ててほしい」――。前出の日本KAIGOプラットフォームの開発は、こうした想いからスタートした。