「保険局が動かないうちは道半ば」

 遠隔診療の活用を後押しする施策として、今回の通知だけでは不十分とする声も上がった。多くの識者が指摘したのが、診療報酬上の扱いには依然として変わりがないことである。

 例えば、対面診療と適切に組み合せて行われるのであれば、初診を遠隔診療とすることも可能とされているものの「保険診療において初診対面の原則は変わらない」(メドレーの豊田氏)。つまり「診療報酬については現行制度のまま変わらず「電話等再診」のみであり、「初診」には適用されないことに留意が必要」(鉄祐会の武藤氏)な状況が続いている。

 京都府立医科大学の加藤浩晃氏はこの点について「遠隔診療の初診に保険点数を付けることについては、以前から期中改訂の可能性も議論されていた」と指摘。初診に遠隔診療を適用することも可能だと明確化するうえで、今回の通知ではこの議論が反映された形での言及がなかったことが気になったとしている。

 国際医療福祉大学三田病院の田村氏は通知の“発出者”に着目し、次のように指摘する。「注目すべきは、今回の通知が依然として厚生労働省医政局長からの通達である点だろう。保険診療について取り扱うのは厚生労働省保険局であり、保険点数への取り扱いは保険局が当事者として関わらない限り、動くことはない。遠隔診療が保険診療として追加算定され、管理料などのコスト請求も可能になれば、遠隔診療は今後爆発的に普及していくだろうが、現時点ではまだその域には達していないと読み取ることができる。そのギャップを埋めることができるのは、現場の診療におけるエビデンスだ。有意差をもって医療福祉に貢献できるデータが出そろってくれば、医政局と保険局がそろい踏む形での通知につながっていくと期待できるが、まだ道半ばの感がある」。

 このほか、遠隔診療に関する解釈のさらなる明確化や周知徹底を望む声も上がった。原氏は「地方厚生局や保健所などのレベルでは理解にばらつきがあるので、周知徹底していくことが大切」と指摘。今回の通知で禁煙外来について示された完全遠隔診療についても「個別の疾患ごとの扱いだけではなく、どのような疾患領域でどのような条件を満たすと遠隔診療のみでの診療が認められうるのか、基本的な考え方の指針が示される必要がある」(原氏)とコメントしている。