慎重な運用を求める声は根強く

 好意的な意見が多かった一方で、実際には引き続き慎重な運用が求められるという趣旨のコメントも目立った。

 ICTを用いた新しい医療の姿を提唱している医療法人社団 鉄祐会 理事長/インテグリティ・ヘルスケア 代表取締役会長の武藤真祐氏は、今回の通知で明確化された点は「いずれも『患者側の利点に十分勘案して』『直接の対面診療と適切に組み合わせて』『直接の対面診療に代替しうる程度の有用な情報が得られる場合』という前提があることを十分認識することが必要」だと指摘する。ICT活用の利点は「医療アクセスの向上による治療からの離脱防止に加え、患者情報の取得により、患者に寄り添った適切なケアが提供できることにある。この点を踏まえ、通院困難者あるいは慢性疾患などで継続的な療養が必要とされる患者など、従来の対面診療では十分にケアできなかった層に対し、医師の負荷を軽減しながら適切な医療を提供していく」(武藤氏)ことが必要だという。

 サービス事業者も「オンライン診療の活用には適切な医師の判断が必要という前提は変わらない。オンライン診療が医療の質を損なうことのないよう、引き続き丁寧な普及に努めていく」(メドレーの豊田氏)とあくまでも慎重な姿勢だ。

 日立総合病院の園生氏は、今回の通知では個々の医師の裁量に委ねる側面が強くなっており、「医師の裁量権の拡大ともとれる」(園生氏)と指摘する。結果として、これまで以上に個々の医師の判断に基づいた診療形態の多様化が進むと考えられるという。ただし「医師の職業倫理は概して高いため、不要の拡大解釈による事故の発生などの懸念は大きくないだろう。現在ですら、遠隔診療の方が対面診療よりも長時間話す傾向にある医師が多い」としている。