禁煙外来とツールへの言及に一定の評価

 今回の通知については、識者6人はおおむね「オンライン診療のより柔軟な運用が許容されることが明示されたことは普及に向けた後押しになる」(メドレーの豊田剛一郎氏)という趣旨のコメントを寄せている。その上でほぼすべての識者が言及したのが新たに盛り込まれた2点、つまり「保険者が実施する禁煙外来」と「遠隔診療に利用するツール」に関する記載である。

 まず、保険者が実施する禁煙外来については、サービス事業者から歓迎の声が上がった。遠隔診療サービス「curon(クロン)」を提供している情報医療の原聖吾氏は「禁煙外来において『遠隔診療のみで診療が実施された場合』の扱いが明確になったことは、遠隔診療に取り組む医療機関にとって朗報」とコメント。遠隔診療サービス「CLINICS(クリニクス)」を手掛けるメドレーの豊田氏も「禁煙外来はオンライン診療と相性がよい分野。今回の通知で、結果的にすべての診療がオンラインで完結することが許容されたことで、禁煙治療においてオンライン診療が柔軟に活用されていく」との見方を示している。

 遠隔診療を実践している医師からの反応も良好だ。遠隔診療と遠隔モニタリングを組み合せた難病診療を手掛けている国際医療福祉大学三田病院の田村雄一氏は「医療保険者が疾病予防として自由診療(保険事業)で行う禁煙外来を完全遠隔診療で行っても差し支えないという点は、前回より踏み込んだ内容になっており評価したい」とのコメントを寄せた。

 遠隔診療に利用するツールへの具体的な言及があったことも、おおむね好意的に受け止められたようだ。情報医療の原氏は「『テレビ電話や、電子メール、ソーシャルネットワーキングサービス等』による遠隔診療の扱いが明確になったことで、医療機関にとって選択肢が増える」と指摘。日立総合病院の園生智弘氏は「情報通信機器の種類ではなく"直接対面と同等の情報が得られること"を必須事項とする、その判断は個々の医師の裁量に委ねるという通達で、クリアになった。過去の通達では対面と遠隔の組み合わせの割合や順番、使う機器などで縛りを加えているイメージがあったため解釈が困難な場合があったが、そこは解消された」とした。園生氏は「テクノロジーの進歩は日進月歩で、例えばテレビ電話やスマートフォンを使ってどの程度の患者情報を得られるかは時系列で変わっていく。テクノロジーの種別や遠隔を組み合わせる割合で遠隔診療の妥当性を判断するのはナンセンスだと考えていた」とも付け加えている。

 電子メールやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)といった汎用ツールの利用を認める見解が示されたことについて、遠隔診療専門のプラットフォームを提供する事業者はどのように受け止めたのだろうか。情報医療の原氏は「LINEやFacebookのような一般的なツールで遠隔診療を行う医療機関も現れる可能性はある」としながらも、「利便性やセキュリティーの観点から、curonのように予約や問診の確認、処方せんや医薬品の配送までを一貫して実現できるアプリケーションには引き続きニーズがある」との見方を示している。