在宅医療にも活用へ

 実証の対象は、外来医療にはとどまらない。在宅医療における有用性の検討も大きなテーマだ。ここに向けてインテグリティ・ヘルスケアは、グループホームや有料老人ホームなどの施設利用型の在宅医療に向けたオンライン問診システムを開発中。こちらも7月中に提供を開始したい考えだ。

 この問診システムは、高齢者本人ではなく、施設の看護師などが入力することを想定したもの。患者自らが入力する外来医療向けシステムとは仕様が異なり、食事や睡眠など高齢者の日常生活に関する状況や、体温や脈拍などのバイタルデータを入力できるようにする。これを使った在宅医療の実証事業にも、複数の機関が参加する見込みである。

 居宅型の在宅医療も実証のターゲット。外来患者向けのiPhoneアプリをベースに、これを居宅型在宅医療にどのように活用できるかを検討していく。

 実証事業では以上のような仕組みを、まずは2017年度末までを試行期間として運用する。この間に明らかにしたエビデンスは順次、2018年度診療報酬改定に向けた議論の材料として提出していく。前田氏は「オンライン診療が診療報酬でどのように点数化されるかは、医療機関の経営の観点からは非常に重要」と指摘する。自らも参加する実証事業を通じ、適切な評価への流れをつくりたい考えだ。

 2017年度の実証事業にかかる費用はインテグリティ・ヘルスケアが負担する。2018年度以降の運用形態については、診療報酬改定の動向を視野に入れながら検討していく。福岡市保健福祉局の中村氏は「診療報酬上の後押しも考えられれば、国のモデル事業に応募したり、協賛企業を募ったりする方法も考えられる。2018年度以降のマネタイズモデルをどうつくるかを、これから議論していく」と話している。