「従来の外来だけでは限界」

 まえだクリニックでは現在、14人ほどの患者が来院時にオンライン問診を利用している。年齢は40~80歳代。循環器疾患や喘息、泌尿器疾患などを抱え、月1回ほどの頻度で通院している患者達だ。

「80歳代の患者も苦にすることなくオンライン問診システムを利用してくれている」と話す、まえだクリニック院長の前田正彦氏(写真:諸石信)
「80歳代の患者も苦にすることなくオンライン問診システムを利用してくれている」と話す、まえだクリニック院長の前田正彦氏(写真:諸石信)

 まえだクリニック院長の前田正彦氏は「通常の外来診療だけでは限界があると感じた。生活習慣病などの治療には、患者の日常への介入が欠かせない。その手段として、オンライン診療が有効と考えた」と、実証事業への参加の動機を語る。実は前田氏は以前から、インターネットを介した医療相談を実施していた。オンラインでの診療にも可能性を感じてはいたが、診療報酬上の評価がなされてこなかったことなどから、本格的な導入には二の足を踏んできた。市医師会が協力する実証事業の立ち上げを知って今回、手を挙げたという。

 同クリニックで運用が始まったオンライン問診システムには、疾患に応じた問診アルゴリズムと、ガイダンスに沿ったスコア判定の機能が組み込まれている。例えば、COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者向けには、CAT(COPDアセスメントテスト)と呼ばれる業界標準の評価テストに沿った問診項目を用意。喘息患者ならACT(喘息コントロールテスト)に沿った問診を受けられる。

医師側の端末には患者の回答結果から算出されたスコアや、その時系列の推移が表示される(写真:諸石信)
医師側の端末には患者の回答結果から算出されたスコアや、その時系列の推移が表示される(写真:諸石信)
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 医師側の端末では、患者の回答結果からCATスコアなどの数値が算出され、そのスコアの過去からの推移が時系列でグラフ表示される(左写真)。問診アルゴリズムには10種類ほどがあり、今後これをさらに増やしていく。

 前田氏は、オンライン問診を取り入れたことで患者と医師の双方にメリットが生まれていると話す。「患者にとっては、自らの状態を自己評価することで、病気や治療への意識が高まる。診察時に患者と一緒に問診結果を見ることで、症状が悪化したときの要因の振り返りなどにもつながっている」(同氏)。医師にとっては、過去の診療記録をいくつも開いたりせずに患者の病状を一目で把握できたり、問診に割いてきた時間を他のことに使えたりする恩恵があるという。