「ビットコイン」に代表される仮想通貨を支えるブロックチェーン技術。これを医療に応用しようという動きが出てきた。電子カルテをはじめとする医療・健康情報記録の共有、医薬品のサプライチェーン管理などへの活用が見込まれている。

 仮想通貨やビットコインという言葉が、ここ1~2年でかなり耳なじみのあるものになった。「投資対象として、ビットコインに関心を持つ医師は少なくない。しばしばビットコインが話題にのぼる」。そんな声も聞こえてくる。

 そして現在、ビットコインなどの仮想通貨を支える技術を、医療に応用しようという機運が高まっている。ブロックチェーンと呼ばれる技術がそれだ。電子カルテやPersonal Health Record(PHR)などの医療・健康情報記録をさまざまな医療機関で共有できるようにする仕組みのほか、医薬品のサプライチェーン管理、医療従事者の資格認定など、期待される用途は幅広い。

 データの正確な記録、それに基づく認証、安全な情報共有、低コストでのシステム運用など、ブロックチェーンは医療分野で求められる要件の多くを満たす。これまで、正確性や安全性を保証するプロセスに多くの手間やコストを要していた医療業務を、システムに委ねることで効率的で安全にこなせる仕組みだ。フットワーク軽く、さまざまな情報連携の仕組みを構築していくことを可能にする。

 一方、「医療現場でブロックチェーンに何ができるのか、まだよく分からない」という声も少なくない。ここにきて、その活用法を具体的に探る取り組みが始まった。

ITヘルスケア学会代表理事で国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター長の水島洋氏は「ブロックチェーンは、これまで縦割りの構造で管理され、十分な活用がなされてこなかった医療情報の活用を促す入り口になる」と話す
ITヘルスケア学会代表理事で国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター長の水島洋氏は「ブロックチェーンは、これまで縦割りの構造で管理され、十分な活用がなされてこなかった医療情報の活用を促す入り口になる」と話す
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 医療分野へのIT活用を推進するITヘルスケア学会は2017年11月、「医療ブロックチェーン研究会」を立ち上げた。ブロックチェーンの医療応用に関して、国内外の事例を集め、その可能性や課題を議論するのが狙いだ。

 ITヘルスケア学会代表理事の水島洋氏(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター長)は、「2017年2月に米国で、ブロックチェーンの医療応用に関するシンポジウムに参加した。その場で感じたのは、インターネットが登場した時にも似た“これは来るぞ”という空気。ブロックチェーンについては国際標準化の動きもあり、あちこちで別々に議論する状況は望ましくない。この分野の情報が集まり、共通に議論できる場を設けたいと考えた」と話す。

 同研究会は2017年に2回の勉強会を開催。ITサービス事業者だけでなく、臨床医など医療従事者の姿も目立ったという。