情報共有などにおいて、地域のネットワークと行政に壁があるのは、縦割り行政にも原因があると感じています。行政が縦割りな状態で地域にかかわっている現状をどう打開するのか。行政としては地域包括ケアや地域共生社会などの看板を掲げているので、まずはその意味を共有していく必要があるでしょう。

千葉市 保健福祉局 地域包括ケア推進課 医療政策班 主査の久保田健太郎氏(写真:加藤康、以下同)
千葉市 保健福祉局 地域包括ケア推進課 医療政策班 主査の久保田健太郎氏(写真:加藤康、以下同)
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 目指すところが共有できれば連携は進むのでしょうが、現状としてはまだまだ不十分と言わざるを得ません。そういった意味では、ICTがそのブレイクスルーのきっかけになる可能性を秘めていると思います。

 各地域から吸い上げた情報は、その地域でどれだけ活用できるかが重要だと感じています。例えば、介護保険事業計画策定における生活実態のニーズ調査を昨年実施したところ、健康づくりに熱心なある団地では各指標の数値は全体的に良く、閉じこもり気味の住人は3人程度しかいませんでした。

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 そこで「3人しかいないなんで素晴らしい」と称賛すると、その団地の自治会役員は「何を言っているんだ。3人“も”閉じこもっているじゃないか」と逆に怒られてしまったんです。

 行政目線で見るとこの団地は非常に優秀なのですが、当事者にとっては課題が明らかになったということ。吸い上げた情報を基に専門職がアセスメントなどを実施することはもちろん必要ですが、地域の住民がこの一次情報を「我が事としてどう活用するか」ということも、地域共生社会においては重要となるでしょう。

■変更履歴
記事初出時、「二次調査」とあったのは「ニーズ調査」でした。お詫びして訂正します。また、「団地の担当者」を「団地の担当者自治会役員」と表現を変更いたしました。記事は修正済みです。