行政の保健福祉分野のセクションは、長年にわたって「制度ありき」で仕事を進めてきた背景があります。そのため職員には、ビジネス的な感覚があまり染みついていません。「制度は変わり得る」という感覚も薄く、「自分たちがチャレンジすれば制度は変えられる」という意識も根付いていません。地域包括ケアは行政と地域が一緒になって作り上げていくべきものなので、我々としてはそういった点を改善していく努力が必要といえます。

福岡市 保健福祉局 健康医療部 健康増進課の平田俊浩氏(写真:加藤 康、以下同)
福岡市 保健福祉局 健康医療部 健康増進課の平田俊浩氏(写真:加藤 康、以下同)
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 2020年の健康・医療・介護・医療制度のあるべき姿に向けて、各ステークホルダーがどのようなな役割を担うのか。それぞれがバラバラにならないために、私がキーワードと考えるのは「自立」です。実は以前、福岡市では2040年に向けた福祉と保健の相互ビジョンを作ったことがあります。その際に戦略テーマとして考えたのが、生活者の4つの「自立」でした。

 第1は「健康自立」。これは、市民一人ひとりができる限り自分から健康づくりに取り組むことです。第2は「生活自立」。介護などの支援が必要な状態になっても、ICTなどを活用してなるべく自立して生活することを目指します。

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 第3は「経済自立」。高齢期においても年金などの社会保障制度だけに頼らず、自らの貯蓄や収入によって経済的に自立することが求められます。そして第4は「終末期の自己決定(自立)」。これは自分の最期を第3者に任せるのではなく、自分が望む最期を意思表示することになります。

 福岡市としては、この4つの自立を行政がサポートしていくべきだと考えています。そしてこれが、情報共有における役割分担においても、ひとつの方向性になるのではないかと感じています。

 医療や介護の情報共有において、中心にあるべきはやはり「人間」です。中心にいる人間をどう支えていくのか。その点を重視して、政策やツールを実現していくことが必要でしょう。(談)