医療・ヘルスケア分野の情報共有や連携のあり方は、海外ではどのように変わりつつあるのか――。第2回座談会の議論に先立ち、医療IT分野に力を入れる米Microsoft社と米Intel社が海外事例をそれぞれ紹介した。本記事では、Microsoft社が挙げた事例をレポートする。

 米Microsoft社でアジア地域のヘルスケア事業を指揮するMicrosoft Asia, Senior Director of Health and Social ServicesのGabe Rijpma氏は、「医療に力を」と題し、クラウドやモバイルを用いた新しい医療提供の米国における事例を紹介した。

Microsoft Asia, Senior Director of Health and Social ServicesのGabe Rijpma氏(写真:加藤康、以下同) 
Microsoft Asia, Senior Director of Health and Social ServicesのGabe Rijpma氏(写真:加藤康、以下同) 
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 Rijpma氏はまず、人口増加や高齢化、慢性疾患の増加といった医療ニーズの増大に世界中が直面していると話し、これに応える医療リソースの側でも「サイバーセキュリティー上の脅威、それに伴うコンプライアンス強化などの制約が増えている。技術のサイロ化が進み、周辺技術との連携もうまく取れていない」とした。

 ケアすべき対象も変化しつつあるという。例えば入院患者が減る一方、外来患者は増えている。こうした変化に応えるためには「ヘルスケア・健康・医療のシステムデザインの変革が必要」とし、具体例として次の4つを挙げた。(1)患者との関わりの変革を通じた患者体験や治療成果の向上、(2)ケアチームの対応力強化を通じた医療従事者の生産性向上、(3)データ分析を通じた臨床と現場運用の最適化、(4)インテリジェントデバイスなどの活用によるケア全体の変革とそれによるケアコストの削減、である。

 これら4つのすべてにおいて、変革の原動力になるのはテクノロジーだとRijpma氏は話す。具体的には「患者の遠隔モニタリング」「ビデオ診療などのバーチャルケア」「AI(人工知能)を用いた予測モデルや翻訳・応答システム」「ゲノム情報などに基づく個別化医療」などの技術だ。その基盤になるものとして、医療の世界で「クラウドコンピューティングが前面に出てきている」という。