宇宙航空研究開発機構(JAXA)・種子島宇宙センターで2017年4月から燃焼試験を開始した国産の新ロケットエンジン「LE-9」。H-IIロケット以来、29年ぶりの完全新規開発となる新国産大型ロケット「H3」の第1段エンジンの技術と開発の背景、ライバルとなる世界の動きを、これまで3回にわたって説明してきた。最終回はH3ロケット、そしてLE-9エンジンが、将来の商業ロケット打ち上げ市場でどのような地位を占められるかを予想していこう。

種子島宇宙センターで燃焼試験を開始した国産の新ロケットエンジン「LE-9」
種子島宇宙センターで燃焼試験を開始した国産の新ロケットエンジン「LE-9」
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 衛星運用事業者といった商業打ち上げ事業のカスタマー(顧客)が、ロケットに求めるのは、

  • (1)打ち上げ価格が安く低コストである
  • (2)故障などのトラブルを出さず、狙った期日にきちんと打ち上がる
  • (3)信頼性が高く事故を起こさない
  • (4)衛星を予定した軌道に高精度に投入できる
  • (5)投入軌道から運用軌道への移動などの衛星側にかかる負担が小さい
  • (6)打ち上げ基地への衛星搬入が容易で、打ち上げ前に衛星を整備するための設備が充実している

――などだ。

 これらのうち、LE-9の性能や機能が直接関係するのは(1)から(3)まで。そしてLE-9がふれ込み通りの性能で、予定期日にきちんと完成すれば、これら3つの要求項目を満たすのはほぼ間違いない。