2017年4月、国産の新ロケットエンジン「LE-9」の燃焼試験が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)・種子島宇宙センターのテストスタンドで始まった。LE-9は2014年に29年ぶりの開発が始まった国産次世代主力ロケット「H3」の第1段用の新エンジンである。試験にはLE-9エンジン4基を投入し、来年度第1四半期までに1シリーズあたり11~17回、合計5シリーズのエンジン燃焼試験を実施する予定だ。

種子島宇宙センターのテストスタンドに据えられた新ロケットエンジン「LE-9」
種子島宇宙センターのテストスタンドに据えられた新ロケットエンジン「LE-9」
(画像:JAXA)
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 H3は単なる新型ロケットではない。2001年初打ち上げのH-IIAロケットの開発以降停滞し、世界の潮流にすっかり遅れてしまった日本のロケット技術と人材を蘇らせ、世界の一線に再び挑戦できる状況まで引き戻す重要な役割を担う。その成功を左右する鍵の一つが今回、燃焼試験が始まったLE-9である。

 日本はH3で何を成し遂げようとしているのか。海外のライバル勢と国際市場の現状を踏まえつつ、H3やLE-9のコンセプトや設計から透ける狙いと課題を4回に分けて解説していくことにする。

松浦 晋也(まつうら・しんや)
ノンフィクション作家/科学技術ジャーナリスト
松浦 晋也(まつうら・しんや) 宇宙作家クラブ会員。1962年東京都出身。慶應義塾大学理工学部機械工学科卒、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。日経BP社記者として、1988年~1992年に宇宙開発の取材に従事。その他メカニカル・エンジニアリング、パソコン、通信・放送分野などの取材経験を経た後、独立。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。
◇主な著書
『のりもの進化論』(太田出版) 2012
『小惑星探査機はやぶさ大図鑑(共著)』(偕成社) 2012
『飛べ!「はやぶさ」小惑星探査機60億キロ奇跡の大冒険』(学習研究社) 2011