3次元測距センサー「LiDAR(ライダー)」と同等かそれ以上に、自動運転車のキーコンポーネントとして注目されているものがある。デジタル地図だ。容易に想像できるだろうが、AI(人工知能)を搭載した自動運転支援システムがクルマを操る情報源として欠かせないのは、車載カメラ・レーダーで収集したデータ、デジタル地図データ、道路工事や車線規制などの交通情報データである。これらを組み合わせて、クルマの安全走行を実現するわけだ。

 トヨタ自動車、米インテル、米エヌビディア、中国インターネットサービス大手のテンセント・・・。これらの企業が、デジタル地図の分野で一目を置いている会社がある。デジタル地図情報サービス大手の独ヒア(HERE)だ。ヒアは日本ではまだあまり知名度は高くないものの、米グーグルとオランダのトムトムと並ぶ世界3大地図会社の1社である。

 ヒアの母体は、フィンランドの携帯電話メーカーであるノキアの地図事業部門。ドイツの自動車メーカーの独BMW、独アウディ、独ダイムラーの3社からなるコンソーシアムが2015年8月、ノキアの地図事業部門を約28億ユーロ(3500億円)で買収。それを会社として独立させたのがヒアだ。

 現在ヒアは、欧米のカーナビ市場で圧倒的な存在感を示す。欧米で販売されているカーナビ搭載自動車の8割が、ヒアのデジタル地図を利用。トヨタ自動車は、北米で展開するクルマの車載システムにヒアの地図情報を利用するという。

画面●ヒアが提供するクラウドサービス「Open Location Platform」が、高速道路に設置された道路標識などの地図関連情報を取得・更新する様子のイメージ
画面●ヒアが提供するクラウドサービス「Open Location Platform」が、高速道路に設置された道路標識などの地図関連情報を取得・更新する様子のイメージ
(出所:独ヒア)
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 ヒアが多くの企業から注目を集める理由は、「Open Location Platform」と呼ぶ地図情報クラウドサービスを開発中だからだ。Open Location Platformは、交通情報に関する様々なデータを収集・提供するクラウドサービス。具体的には、高精度の3次元デジタル地図情報や道路標識、クルマから収集した渋滞、障害物の存在、事故、天候などの周辺情報をリアルタイムに共有し、他のクルマに知らせる機能を備えており、自動運転車の実用化に役立つクラウドサービスとして注目されている。