自動運転を実現するためには、クルマの周囲360度にある物体の形状や距離を測定するセンサーが不可欠である。それが「LiDAR(ライダー)」と呼ばれる、レーザースキャナーだ。「完全自動運転を実現する本命」と言われることのあるグーグル系のウェイモ。その理由の一つは、低価格のLiDARを独自開発していることである。

 「LiDARを外部から調達すると7万5000ドル(約800万円)かかるところ、当社のLiDARは90%減の7500ドル(約80万円)に抑えられる」。自動運転車開発を手掛けるウェイモのジョン・クラフチックCEOはこう説明する。

写真●ウェイモの自動運転技術を装備したFCAのハイブリッドミニバン「Chrysler Pacifica Hybrid」 。上部の円筒状デバイスがLiDARである
写真●ウェイモの自動運転技術を装備したFCAのハイブリッドミニバン「Chrysler Pacifica Hybrid」 。上部の円筒状デバイスがLiDARである
(出所:米ウェイモ)
[画像のクリックで拡大表示]

 LiDARの利用イメージはこうだ。クルマの上部にLiDARを設置することにより、ドライバーの死角にいるクルマや歩行者を検知できる。道路や周囲の建物の形状と3次元地図データを比較し、地図上のクルマの詳細な位置を把握する。その精度はGPS(全地球測位システム)よりも高い。生命線となる3次元地図データはクラウド経由でリアルタイムに更新できる仕組みだ。

 いかにLiDARが自動運転車の実現に大切な存在なのか。そのことを示す事件があった。ウェイモと、ライドシェア(相乗り)大手である米ウーバーテクノロジーズとの泥沼の係争である。

 ウェイモは2017年2月、「LiDARの機密情報を盗用した」としてウーバーを提訴。「ウーバーに移籍した元グーグル社員(2016年1月にグーグルを退社)が、LiDARの設計図を含む約1万4000点の資料をグーグル(ウェイモがグーグルから独立する以前)から不正に持ち出し、LiDARの開発に転用した」というのがウェイモの主張だ。

 米サンフランシスコ連邦地裁は2017年5月、ウェイモの主張をおおむね認定し、ウーバーに移ったグーグル元社員に対して、持ち出したLiDAR設計資料をウェイモに返却するよう命じる仮処分を下した。