自動運転の中核技術といえる制御ソフトウエアの開発で、ホンダが米ウェイモと提携することを検討している。これは衝撃的なことだ。自前開発主義の強いホンダが、今までのこだわりと決別する意思を見せたともいえるからだ。ウェイモの案件以外でも、ホンダは協調戦略を加速している。

 ホンダは2016年7月、ソフトバンクグループと対話用の人工知能(AI)技術の開発で提携した。提携は順調に進んでいるようで、2017年1月に開催されたエレクトロニクスの総合展示会「CES 2017」で、2人乗りの自動運転車のコンセプト車「NeuV(ニューヴィー)」を公開した。乗員の嗜好や感情をAIで推定する技術をソフトバンクグループと共同で開発し、それをニューヴィーに搭載する。

写真●ホンダが開発したコンセプト車「ニューヴィー」
写真●ホンダが開発したコンセプト車「ニューヴィー」
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 ニューヴィーの特徴は、運転者と対話するAIや、新しいモビリティーサービスの考え方を採用していることだ。例えば、ニューヴィーの所有者が職場に行ってからニューヴィーを使わない時間帯に、自動で他人とシェア(共有)できるようにするということだ。所有者の感情を推定し、そのときの気分に合わせて提案する機能の実現も目指している。

 ホンダの発想の原点は、多くの人が考える自動運転時代のモビリティーの姿に疑問を持ったことにある。世間でよく議論されるモビリティーサービスは、「自動運転車が一定間隔に人を運んで進む公共交通機関のようだ」とホンダには映る。その本音は、自動運転車は“つまらないクルマ”ということだろう。「もっと面白い使い方があるのではないか」(ホンダ)と考えて、ニューヴィーを開発した。