堅実路線で完全自動運転の実用化を目指す日産自動車。2018年に車線変更の自動化を実現した後、2020年までに完全自動運転の前段階といえる「レベル3」の車両を実用化する。

 2017年1月、日産はコンセプトカー「Vモーション2.0」を発表。このクルマは、レベル3に相当する技術の採用を見据えたものである。

写真●日産自動車が2017年1月に発表した「Vモーション2.0」
写真●日産自動車が2017年1月に発表した「Vモーション2.0」
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 このクルマからは、自動運転に対する日産の堅実な姿勢が垣間見える。レベル3相当を想定した車両であっても、乗員がステアリングから手を離すことを基本的に許さない考えを示しているからだ。レベル3とは、通常走行時は自動運転で、緊急時に運転者が操作するという段階の自動運転車のこと。Vモーション2.0は、自動運転中に運転者がステアリングから一定時間手を離すと、手動運転に切り替えるようになっている。

 レベル3のクルマを実現する上で難しいとされるのが、自動運転から手動運転へ切り替える機能の開発である。自動運転中の乗員は運転に集中していないことが多いため、クルマが勝手に手動運転へ切り替えた場合、乗員がそれに即座に対応できない可能性が高いからだ。「(完全自動運転の)レベル4よりも、レベル3のクルマを実現するほうが難しい」と指摘する専門家は少なくない。

 日産はコンセプトカーで、自動運転中にクルマのステアリングから手を離すことを許さない仕様にし、常に人間である乗員に“運転手”であることを求めるようにした。これにより、「自動運転から手動運転への切り替え」に乗員が即応できないことで起こり得る事故を防ごうとしているわけだ。

 自動車メーカーは立場上、乗員の「手放し運転」を推奨できない。とはいえ「手放し運転」こそが、現行車と異なる自動運転車の大きなセールスポイントの一つであり、自動車メーカーにとっては頭の痛いところだ。この点に関して日産は、事故防止・安全第一の姿勢を貫く。安全面における完成度を相当レベルまで高められない限り、手放し運転を実質的に許さない――。日産の自動運転車の開発はこうした考え方で進められている。