「IoT(Internet of Things)開発キット」をご存じだろうか? マイコンや各種のセンサーを組み込んだ半完成品の電子部品モジュールで、開発者が他のセンサーやモジュールと組み合わせたり、自作のプログラムを組み込んだりすることで、モノを介したインターネットサービスであるIoTのプロトタイプ・サービスを作れるようにしたものだ。

 新たなサービスを生み出すと期待されるIoT分野の新たな需要を掘り起こそうと、半導体やセンサーを扱うメーカー各社は、自社製品を組み込んだ様々なIoT開発キットを用意して開発者に向け提供している(表)。

主なIoT開発キット/レファレンス・デザイン/評価ボード
提供企業製品名
アドバネット(伊Eurotech社)IoT Development Kits
アルプス電気環境センサモジュール 開発キット
マクニカIoTワンパックモジュール
ロームセンサメダル、センサ評価キット
オランダNXP Semiconductors社IOT-MODULAR-GATEWAY
米Avnet社MicroZed Industrial IoT Starter Kit
米Cypress Semiconductor社CYALKIT-E02、CYALKIT-E03
米Intel社Joule 570x 開発キット
米Maxim Integrated社MAXREFDES143#
米ON Semiconductor社IOT Development Kit
米Silicon Laboratories社Thunderboard React キット
米Texas Instruments社SensorTag
台湾ADLINK Technology社Intelligent IoT Gateway Starter Kit
台湾Advantech社IoT Gateway Starter Kit

※日経 xTECH調べ(調査継続中)

 IoT開発キットの特徴の一つは、そこに組み込まれた自社製品の機能を最大限に生かそうとする設計になっていることだ。自社製品の売り込みのために作られているから当たり前と言えばそうだが、結果的に各社の電子部品の特徴や設計思想がよく現れたショーケースになっている。

 幅広い技術者を対象にするため、扱いやすく比較的すぐに使い始められる点も共通する。部品メーカーがセットメーカーの技術者を想定して従来提供してきた「参照設計」などと異なり、ハードウエアや半導体などに必ずしも詳しくない技術者の利用を想定しているからだろう。IoTではネット系のプログラマーなど、異業種の技術者の参入が見込まれるからだ。日経 xTECHの読者のみなさんにも興味津々な方が多いのではないだろうか?

 そこで日経 xTECHでは、各社のIoT開発キットの現物を入手し、技術者が実際に使って遊んでみた感想をお届けする記事を掲載する。レビューをお願いしたのはネットの技術にも、ハードウエアの技術にもとても詳しい技術者の新里 祐教さん。普段はネットサービス企業のGMOインターネットで社長直轄の特命担当技術分析官を務める。また、ユニークな視点の技術解説記事の執筆でも実績があり、最近ではAmazon ダッシュボタン」をいち早く分解、解析する記事を執筆して好評を得ている。

 「ものづくり」は新里さんの趣味でもあり、デジタル技術を使ったメディアアート作品を製作して、サンフランシスコや深圳の「Maker Faire」に出展したりもしている。このほか、電動バイクを自作してレースに出場する(関連記事:「 IT技術者が自作で挑戦! 電動バイクレース「2016 Ene-1 GP SUZUKA」参戦記)といった幅広い活動をしており、ものづくりを志す都内の技術者コミュニティでは知られた存在でもある。

 IoTにも興味津々で今回の企画を2つ返事で引き受けて戴いた。IoT開発キットすべてを網羅するのはおそらくできないが、不定期で、新里さんが飽きるまでは掲載する予定だ。

新里 祐教(にいさと・ひろたか)
GMOインターネット 特命担当技術分析官
新里 祐教(にいさと・ひろたか) 岩手大学工学部卒。フリービットにてIPv6、VoIP、オーバーレイネットワークの開発業務に従事。現在はGMOインターネットにて、スマートフォン向けアプリケーションの開発などに携わる。いわゆる「ものづくり」も好きで、デジタル技術を使ったメディアアート作品を製作して世界各地の「Maker Faire」に出展している。