今回試用するのは、伊仏合弁STMicroelectronics社の小型マルチセンサーモジュール「SensorTile」の開発キット「STEVAL-STLKT01V1」だ。開発キットの価格は89米ドル、SensorTileモジュール(STEVAL-STLCS01V1)単体でのサンプル価格は35米ドル。今回、日本向けに技適(特定無線設備の技術基準適合証明)を取得できたとのことで試用させてもらった。

 開発ボードといえば比較的大きいものが多い。ところが今回の製品はウエアラブル機器なども対象としており、小型化を追求しており、これが最大の特徴だ。基板面積は13.5mm角と1円玉よりも小さい。この小ささのためか、新里 祐教氏(GMOインターネット 特命担当技術分析官)のテンションはいつになく高い。まずは製品の構成から見ていこう。

 伊仏合弁STMicroelectronics社が超小型モジュール「SensorTile」を発表したのは2016年12月のこと。わずか13.5mm×13.5mmのサイズの基板上に、Arm Cortex-M4、マイク、3軸加速度センサー、ジャイロセンサー、地磁気センサー、気圧センサーとBluetooth無線通信向けIC(ネットワークプロセッサーIC)を搭載している。

1円玉より小さいサイズに機能を詰め込みまくり

 よく1円玉より小さいサイズに多数のセンサーを詰め込んだものだと感心してしまう。あまりにも小さいため、ポロっと落としたり他のパーツの中に紛れたりしてしまうと、見つけるのに苦労する小ささだ。実際、何度か落として探す度にドキドキした。

SensorTileモジュール
SensorTileモジュール
SensorTileの基板面積は13.5mm×13.5mm。この中にSTM32L476JGY6(Arm Cortex-M4マイコン)、MP34DT04(MEMSマイク)、LSM6DSM(3軸加速度センサー、3軸ジャイロセンサー)、LSM303AGR(3軸加速度センサー、3軸地磁気センサーを備える電子コンパスモジュール)、LPS22HB(MEMS気圧センサー)、BlueNRG-MS(Bluetooth無線通信向けIC)を搭載する。いずれもSTMicroelectronics社の製品。
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 筆者自身も小型の基板を設計した経験があり、同じような極小基板を設計したエンジニアと話す事もあるが、基板は1mm小さくするだけでも非常に色々な事を考える必要がある。この寸法の中に収めたのは、本当にすごいと思う。

 SensorTileで利用されている最小の部品は、抵抗、コンデンサーやインダクターといった表面実装部品(チップ部品)で、実装面積が0.6 mm×0.3 mmのいわゆる「0603サイズ(インチ表示では0201)」だ。逆に、1番大きい部品は基板対基板用コネクターの5.6mm×2.98mm(Hirose、 BM10NB(0.8)-16DS-0.4V(51))で、次に大きいのはCortex-M4マイコンの4.4mm×3.76mm。これらの部品のサイズオーダーは1mm以下という小ささだ。同社が公開している基板設計のガーバーファイルと部品表(BOM)を見ると、よくこのサイズに収めたな、と非常に参考になる。

 ちなみに、筆者が個人的に加工した最小サイズの物は、USB 3.0用のAWG#40のマイクロ同軸ケーブルで、内部導体の直径はわずか0.0799mm(79.9μm)(紹介ページ日本語版英語版)。初めは“絶対にこんなサイズのものを人間の手で加工するのはムリ!!”と思っていたが最終的には実現でき、“練習と失敗を重ねれば人間、何でも出来るものだな”と思ったのを思い出した。また、これくらい小さい物を触っていると、1mmというサイズの物でさえ大きく感じてしまう不思議な感覚になる事がある。人間の慣れというのは怖いものだ。