今回はラピスセミコンダクタの低消費電力マイコンボード「Lazurite(ラズライト) Sub-GHz」の特定小電力(920MHz帯)無線通信の実力を、フィールドテストで測定してみる。前回までに準備した機材を抱えて、ネットサービス企業のGMOインターネットで特命担当技術分析官を務める技術者の新里 祐教氏は荒川河川敷に降り立った(編集部)。

荒川河川敷でフィールドテストする筆者
荒川河川敷でフィールドテストする筆者
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 前回に続き、ラピスセミコンダクタが販売する920MHz帯無線通信モジュール搭載の低消費電力Arduino互換マイコンボード「Lazurite(ラズライト) Sub-GHz」を試用していく。

2種類のフィールドテストを準備

 今回はいよいよフィールドテストだ。以下の2つの環境のテストを実施する。

  • (1) 見通しが利く平地でのテスト――荒川河川敷
  • (2) 人混み、街中でのテスト――休日の銀座・歩行者天国

 平地のテスト(1)は筆者の自宅に近い、荒川河川敷で実施した。写真の通り、荒川河川敷は見通しが利いてとても広い。なぜ見通しフィールドテストの場所に荒川河川敷を選択したかといえば「平地の直線が続いて広い」点に尽きる。

 実は当初は海岸に出掛けるつもりだった。見通しで500mを確保できるほぼ平地の場所と考えたときに、広大な公園か海岸しか思いつかなかったからだ。公園は木が生い茂っていたり、障害物がわりと多かったりするのが予想されたので候補から除外。海岸線なら目の前は海の平面で、1km程度の直線は簡単に確保できる。そこで当初は海にテストに行こうと準備していた。ところがある知人が「河川敷ならありますね」とのアドバイスをくれた。確かに広大な平地で障害物も無いという条件にマッチする。そこで近所の荒川河川敷でテストすることにした次第だ。

 前回までに説明したとおり、今回のフィールドテストの目的は、ラズライト Sub-GHzが備える特定小電力(920MHz帯)無線通信モジュールの実力を測ること。実験用の機材はラズライトシリーズで揃えている。

フィールドテストのために荒川河川敷に持ち込んだ機材
フィールドテストのために荒川河川敷に持ち込んだ機材
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 ラズライトを使った「手持ち機」と「ゲートウエイ機」のほかに、スマホ2台とパソコンである。これ以外に固定用の三脚とかガムテープ、メジャーなども持ち込んだ。パソコンはゲートウエイ機のプログラムの起動やログ確認に使う。スマホの1台はゲートウエイ側のテザリング用。もう1台のスマホは持ち歩いて実験状況を確認するために使った。

 具体的には、ラズライト Sub-GHzにGPSモジュールを組み合わせた手持ち機が、サブギガ無線を使ってゲートウエイ機に自らの位置情報を毎秒送信する。ゲートウエイ機は受信した情報をネット上のサーバーに自動記録するという案配だ。

 ゲートウエイ機は手持ちの格安PCボード「Raspberry Pi 3(以下、RPi3)」に、RPi用のモジュール「ラズライトPi Gateway」を取り付けて構成。ゲートウエイ機からインターネットへの通信にはスマートフォンのテザリング機能を使う。また電源はいずれもモバイルバッテリーを接続してまかなった。

フィールドテスト環境の構成
フィールドテスト環境の構成
手持ち機からGPSで得た位置情報をサブギガ無線でゲートウエイに送信する。ゲートウエイ機はMQTTを使ってサーバーにデータを送信する。このデータを手持ちのスマホで確認できる
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