場当たり的なアイデア創出から良質なアイデアは生まれない

 新規事業開発を始める際、まずはアイデア創出から、という声をよく耳にします。多くの企業では、社員からアイデアを集める取り組みや、社員を集めてブレーンストーミングを行うなどのアイデア創出手法を活用しているようです。しかしながら、良質なアイデアを継続的に創出するためには、いくつかの準備が必要です。場当たり的にアイデア創出を試みても、好ましい結果を得ることは難しいといえます。

 ITの世界には「Garbage in, Garbage out」という表現があります。無意味なデータからは無意味な結果しか出てこないことを意味しています。新規事業開発のアイデア創出も同じで、アイデア創出のための準備となるデータ収集や分析をせずに各社員からアイデアを収集するだけでは、アイデアの質は、各社員の日々の情報収集力、分析力、および洞察力に依存してしまいます。インプット情報が不安定な組織が、良質なアイデアをアウトプットとして創出することは困難です。

 また、アイデア創出の手法としてブレーンストーミングが有名ですが、ブレーンストーミングに頼っても、創造的なアイデアを創出することは難しいといわれています。『馬を飛ばそう―IoT提唱者が教える偉大なアイデアのつくり方』の著者であるKevin Ashton氏は、ブレーンストーミングに関する複数の研究結果を引用し「創造する最良の方法は、1人で作業をして状況をその都度、評価することで、最悪の方法は、大人数のグループで作業して批判を先延ばしにすることである」(参考文献1)と述べ、良質なアイデア創出のためにブレーンストーミングは適切ではないと結論付けています。新規事業開発を組織的に取り組むためには、アイデア創出に適切な方法を用いるよう、手順や仕組みを構築することが大切となります。

 今回は、新規事業開発プロセスの全体像(図1)のうち、テーマ創出フェーズに実施するアイデア創出と事業テーマ選定を中心に、組織的に取り組みを進める方法を紹介します。

図1●新規事業開発プロセスの全体像
図1●新規事業開発プロセスの全体像
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