日経テクノロジーオンライン記事「新規事業開発は希望者に任せるのが一番」に掲載されている「新規事業がうまくいく要因」を見てみると、回答者のうち新規事業がうまくいっているとしたグループ(「だいたいうまくいく」+「うまくいくものが多い」+「うまくいく場合が半分くらい」)では、「経営トップの意識・意欲が高い」という回答が上位にあります(図1)。新規事業開発に対して熱心なトップがいると、その成功率が高まるようです。

図1●新規事業がうまくいく要因
図1●新規事業がうまくいく要因
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 新規事業開発メンバーが新規事業を企画する際に、その前提となるのはトップから提示される上位戦略です。これが不明確であったり、曖昧(あいまい)であったりすると、対象市場の検討で広範な領域の調査を行わなければならなくなるなど、新規事業開発を進めていく上でさまざまな問題が生じてしまいます。新規事業に対する意識や意欲が高いトップは、この上位戦略の立案についても、明確性の高い内容を下位層に提示しているのではないかと想定されます。

 一方で、上位戦略が不明確・曖昧なまま新規事業開発を推進しているケースをよく見受けます。ひどい場合は、一体何のために新規事業を立ち上げるのか、どこを目指すのかを新規事業開発メンバーがほとんど理解できておらず、「新規事業を立ち上げろ!」とトップから言われたというだけで(仕方なく)対応しているケースなどもあります。また、上位戦略は明確なのですが、それが新規事業開発メンバーにしっかりと共有されていないために、このような「やらされ感」ばかりが先立っているケースも見受けます。

 今回は、上位戦略が曖昧であったり、不明確であったりする中で、新規事業開発を推進する現場の立場として、どのような行動を取っていけばよいかについて、考えていきたいと思います。