オープン・イノベーションの必要性

 企業活動において、社外技術調査は、通常、技術戦略策定や製品開発における競合調査の一環として実施されています。技術調査結果は、特許一覧表などの形式にまとめられ、自社の競争優位性構築を検討するため資料として使用されます。しかしながら、社外の技術情報を、新規事業開発のアイデアを創出するためのインプット情報として活用している企業は少ないように見受けられます。

 近年、新規事業開発の取り組みとして、Henry Chesbrough氏が提唱する「オープン・イノベーション」の考え方が重視されています。同氏は、著書である『OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて』の中で、「オープン・イノベーション」とは「企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造すること」(参考文献1)であると定義しています。一方、「企業は自分でアイデアを発展させ、マーケティングし、サポートし、ファイナンスしなければならない」(参考文献1)という状態を「クローズド・イノベーション」と呼んでいます。

 従来は、研究開発をすべて自社で行う「クローズド・イノベーション」による新規事業開発が主流でした。しかしながら、技術の多様化が進み、進歩が速くなっている現代では、会社の資源と時間を投入し、すべての技術開発を自社で行うだけの猶予を、市場が許さない状況になってきています。このような状況では、必要に応じて社外の技術を活用する「オープン・イノベーション」の考え方を新規事業開発に取り入れることが重要となります。社内のコア技術にこだわるだけでなく、社外の有望技術を活用して「オープン・イノベーション」を創出することが大切となります。

 今回は、新規事業開発の検討において、「オープン・イノベーション」を促す社外技術の具体的な調査手法について紹介します。