重点課題なのに進まない新規事業開発

 「既存事業の延長線上のことだけ考えていては生き残れない。どのような進め方をすれば開発を効率的に進めることができるか?というHowよりも、どのような製品、どのような事業を創れば儲かるか?というWhatの方が重要」という考え方は、半ば常識的に言われています。筆者が技術者からコンサルタントに転身した2002年当時からあった言葉です(図1)。

図1 製造業が直面している課題
図1 製造業が直面している課題
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 しかし、Howの取り組みが下火になったわけではありません。むしろ、活発になってきているとも言えます。これは製品開発・生産の効率化が生き残りの必須要件となってきているためと考えられます。

 一方で、重点課題となったはずの魅力ある製品の企画や新規事業(ビジネスモデル)開発の状況はどうでしょうか?

 魅力ある製品の企画は多くの企業で取り組まれており、「よい製品を考えても、それだけで儲けることは難しくなってきた」といわれるようになってきています。現在は製品だけでなく、市場、顧客、技術、販路、プロモーションなどを含めたビジネスモデルから考え直し、新規事業を開発している企業が多く存在します。

 ところが、実際にはこの取り組みがうまくいっていない企業が多いようです。最近、筆者ら協力した「日経ものづくり2016年3月号「数字で見る現場」・調査テーマ『新規事業開発の方向』の調査結果を見てみましょう(図2)。

図2 新規事業開発についての自己評価
図2 新規事業開発についての自己評価
「うまくいくものは少ない」と「うまくいくものはほとんどない」を合わせて67.7%(小数点以下繰り上げ)になる。
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 新規事業の開発に取り組んだが、「うまくいくものはないか少ない」と回答した企業が約7割(67.7%)を占めています。数は少なくても、うまくいったもので大きな成果が出ればよいのですが、筆者らが日頃接している多くの企業の状況も加味すると、全体的にうまくいっていない企業が多いと言って間違いないようです。