アイデア出しの必要性
新規事業開発テーマのアイデア出しは、熱心に取り組んでいる企業とおざなりになっている企業に二極化する傾向があります。その理由の1つに、アイデア出しの重要性の認識が異なることが挙げられます。
第18回で述べた通り、新規事業開発の進め方を高度化しようとする際、多くの企業がまずステージゲートの運用に取り組みます。これにより成功率向上の成果を獲得できている企業は、開発テーマをステージゲートにおいて選別して中止し、見込みの薄いテーマをずるずると続けることがなくなります。中止テーマが存在すると新規テーマが必要となるため、アイデア出しの必要性が増します。
一方で、ステージゲートによる成果を獲得できている企業は、チャレンジが行いにくくなるデメリットに直面する傾向があります。そのことを自覚する企業が、ポートフォリオを活用することで、新規事業開発に対するチャレンジを促す仕組みを整えています。
ポートフォリオの狙いは、「ローリスク・ローリターンテーマ/ミドルリスク・ミドルリターンテーマ/ハイリスク・ハイリターンテーマ」のバランス、「A市場向けテーマ/B市場向けテーマ/C市場向けテーマ」のバランス、「3年以内に事業化できるテーマ/3年から5年で事業化できるテーマ/事業化に5年以上かかるテーマ」のバランスなど、多角的な視点でテーマ群のバランスを取り、安定的に事業成果を獲得することです。この狙いを実現するためには十分な質と量の新規事業開発テーマが必要になるため、アイデア出しの必要性が増します。
ステージゲート、ポートフォリオとも評価の仕組みのため、十分な量と質の新規事業開発テーマがなければ、機能しないということです。
ステージゲートやポートフォリオのような評価の仕組みがない、または機能しておらず、新規事業開発テーマが中止されることなく継続されているような企業では、アイデア出しの重要性認識が低い場合が多いです。このような企業で見られる現象を以下に挙げます。
□アイデア出しの目的・目標がない
□過去の新規事業開発の振り返りが実施されていない
□アイデア出しが定期的に実行されていない
□時折アイデア出しの取り組みが行われるが、よいアイデアが出てこない(どこかで見たことのあるようなアイデアしか出てこない)
□アイデア出しに真剣に取り組む人が少ない
□アイデア出しに経営資源が投入されていない
□アイデア出しのプロセスがない
□アイデア出しの教育が実施されていない
□よいアイデアが出ても実現に向けた取り組みを進める人がいない
□アイデアを出す人と実現に向けた取り組みを進める人の関係をどうするかの方針がない(同じ人にするのか、別の人でもよいのかなど)
これらの事象の中で最大の問題点がアイデア出しの目的・目標がないことです。目的・目標がなければ改革は進みません。ここでいう目的・目標とは、何のために、どのような質のアイデアをどれくらいの量で出していかなければならないか、ということです。