何度注意しても掃除をしようとしない作業者に業を煮やした管理者は、一計を案じた上で思い切った行動に出ました。管理者として求められる本来の業務の合間を縫って、ピットの清掃を始めたのです。ピットの中に降りて、そこにたまったゴミをかき出し始めたのです。
初めは、管理者の気まぐれなパフォーマンス程度だと作業者は軽く見ていました。しかし、その管理者は手を休める気配はなく、ゴミ1つなくなるまでピットの清掃を続けました。しかも、一度きりではありませんでした。翌月もまた1人でピットの清掃作業を始めたのです。
作業者の1人が管理者に近寄って声を掛けると、管理者は「誰も掃除しないから自分がやってみた。この清掃作業を外注したら、結構な費用が掛かるんだぞ」と言いました。
当然、生産現場の清掃はこの管理者の本来の仕事ではありません。自分たちよりも職位が上の人が、真っ黒になってピットの清掃をしている。しかも、自分たちが軽視していた清掃作業は、費用に換算すればかなり高いことを知りました。こうした管理者の言動から「こんなことではダメだ」と、作業者たちは深く反省したのです。
編集部:それまでに管理者は「ピットを清掃しないと危険だ」と繰り返し伝えたのですよね? 恐らく危険性を納得させるために、テルミット反応により発火・爆発が生じる可能性があるという理由も説明したのではないでしょうか。にもかかわらず、作業者たちは聞く耳を持たなかったのですか?