厳しく叱るべき場面とは
肌附氏— 管理者が部下を厳しく叱らなければならないケースは2つあります。1つは、日頃厳しく指導し、伝えているルール・規則、安全に関する違反を犯したときです。例えば、飲酒運転をして事故を起こしたケース。また、仕事で規則を守らずに大きな問題を起こしてしまったケース。こうした場合は徹底的に叱ります。フォローする必要は一切ありません。むしろ、みんなの前で叱って事の重大さを本人だけでなく、メンバー全員にも周知すべきです。
もう1つは、過失。いわゆるうっかりミスやポカミスはもちろん、たとえ一生懸命にやっていたとしても、本人が気づかずに想定外で問題を起こしてしまった場合には、やはり厳しく叱らなければいけません。叱らないと、その部下は緊張感が欠けて意識を変えることができず、再発を繰り返してしまう危険性があるからです。加えて、そうした部下の態度を放っておくと、それで構わないと思うメンバーが増えて、職場の雰囲気もだらけてしまう可能性があります。
編集部:なるほど。なんでも叱りつければよいのではなく、厳しく叱るべき場面があるのですね。
肌附氏— そうです。ただし、過失の場合は適度な“逃げ道”をつくってあげることが大切です。
編集部:逃げ道とは何でしょうか?
肌附氏— 厳しく叱らなければいけないと、部下を徹底的に追い込んでしまう管理者がいるのです。ところが、起きてしまったことに対して、部下を八方塞がりの状態で責め立てると、部下はどうしたらよいのか分からなくなってしまう。
そこで、過失を叱る際には叱った最後にフォローすることが大切です。例えば、厳しく叱った後に、「実は、私も昔は同じようなミスをしたことがあって、すごく上司に叱られたことがあったんだよ。誰でも1度くらい経験することかもしれない。今後、気をつけなさい」と。
すると、しょんぼりとしていた部下でも、「ああ、この人はフォローしてくれた。自分だけじゃない。上司も若い頃にはそんなことがあったんだな」と安堵し、「次からは絶対に迷惑を掛けないようにしよう」というふうに思うものです。
編集部:過失の場合は、叱った後にフォローし、萎縮してしまうことを防ぐ。決して突き放すのではなく、仕事の質を高める方向へ部下を導くというわけですね。
肌附氏— 管理者がすべきことは部下を育てることですから、叱るという行為も当然、部下の育成につなげるためのものです。従って、厳しく叱りすぎて部下が萎縮し、仕事へのモチベーションが下がってしまうと元も子もありません。
編集部:最近は叱られ慣れていないために、厳しく叱られると落ち込んでしまう部下が少なくないかもしれません。