編集部:部下を叱る。時には必要だと思いながらも、「苦手だ」「できない」と思っている管理者は多いのではないでしょうか。叱ることは、褒めることよりも、ずっと難しいと思います。トヨタ自動車の部長を経験したあるOBを取材した際に、そのOBは「自分よりも年上の部下を初めて叱った時、緊張や怖さの入り交じったなんとも言えない複雑な感情を覚え、足が震えて汗でびっしょりになった。その時に、自分は部長という職位の責任の重さを痛感した」と語っていました。実に重い言葉で、強く印象に残っています。今の時代は教育環境の違いもあって、ひょっとすると、叱る経験だけではなく、叱られた経験もほとんどない人の方が多いのかもしれませんね。
肌附氏— 叱ることは実に難しい。その通りです。部下を叱るにはとても勇気が必要です。それまで良好だった人間関係を損なう危険性があるのですから。そのためか、最近は「部下に嫌われたくないから叱らない」と安易に考える管理者が増えています。
これまでに私は、管理者は部下を「ねぎらう」ことが大切だと何度も述べてきました。部下にねぎらいの言葉を掛け、褒めて伸ばすことはトヨタ自動車の管理者にとってマネジメントの基本であると言っても過言ではありません。しかし、同時に、部下に接する際には優しさが7割、厳しさが3割とも言ってきました。その3割の1つが、前回で紹介した、部下を崖っぷちに追い込む方法や、今回のテーマの叱ることです。
編集部:「叱らない方がよい。褒めて伸ばすべきだ」と言う人もいます。褒めるだけでよいのなら、それで済ませたいと思う管理者は多いことでしょう。しかし、部下を全く叱らないままだと、どうなってしまうのでしょうか。