本コラムでは、日本メーカーの管理者や社員が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み
設計開発部門の部長を務めています。ここ数年、我々の部門では、海外の国や地域ごとの細かな設計対応に追われて業務量が急増しています。これまでは自分でほぼ全てのプロジェクトを管理してきましたが、そろそろ限界を感じつつあります。今後はできる限りプロジェクトを部下に任せたいと思っているのですが、うまくいくのか心配です。成功率を下げずに部下にプロジェクトを任せる良い方法はありませんか。

編集部:最近、仕事が増えて現場が大変になっているという声をよく聞きます。造る製品の種類は増える一方なのに、担当する社員はそれほど増えないというのが、よく聞く理由です。この状況を切り抜けるために、管理者としては部下にどんどん仕事を任せたいでしょうね。しかし、目標はきちんと達成してもらわないといけない。難しいところですね。

肌附氏— 確かに、部下に仕事を任せるか否かの決断は、管理者となった時に大変頭を悩ませられる問題の1つです。管理者は、それ以前に社員として周囲のメンバーを率いながら自ら手を動かして仕事に取り組み、その結果が認められて昇格した人が多い。そのため、管理者としての経験が浅いうちは、あらゆる仕事に対して「自分がやらなければならない」という思いを抱いていることが普通です。