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脳を構成する3つのループ

 今回はせっかくなので、脳を構成するモジュールの統合ついての私の考えもお話します。私は大脳皮質のモデル化より、小脳や大脳基底核の方に興味があり、これらも含めた包括的なアーキテクチャを考えています。

 生理学的な知見から、大まかには、脳には図4や図5に示す3つのループ構造があると考えています。(1)視床→大脳皮質→大脳基底核→視床というループ(図4の左側、図5の紫の矢印)と、(2)視床→大脳皮質→小脳→視床というループ(右側、青の矢印)と、(3)視床→大脳皮質内→視床(中央、赤の矢印)というループの3つです1)、2)、3)

図4 筆者が考える脳のアーキテクチャ
図4 筆者が考える脳のアーキテクチャ
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図5 脳内の3つのループ
図5 脳内の3つのループ
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 大脳基底核は強化学習によって自己の利益を最大化しようとし、小脳は外界や自己を含めた世界の内部モデルを教師あり学習によって構築するのが役割です。大脳皮質は教師なし学習で外界から得た情報から有用な情報を抽出し、より高度な、あるいは抽象的な概念の獲得を目的とします。大脳基底核や小脳の構造が、動物の種によってさほど変化がない一方で、ヒトの大脳皮質は非常に大きいというのも、この考えに一致するところがあります。