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 今回は前回の小脳のモデルとは異なり、まだ明らかにされていない部分が多い言語や意識について、関連研究を見ていきましょう。両者は全く異なるように思えますが、あることが意識に上っている(アウェアネス、aweaness)かどうかは言語によって確認することが多いので、ここではまとめて扱います。

  なお関連する項目として、言語野については第8回、障害が示唆する脳の構造については第10回で説明しています。あわせてご覧ください。

肝心な部分が未解明

 実は言語野については計算機モデルがあまりなく、あまり書くことがありません。そもそも言語野の機能自体がまったく分かっていないのに、それを具体的にモデル化できないのは当然なのですが……。

  これまでの連載で説明したように、人がある行動をしているときに脳のどの部位が活発に活動するかという相関関係は、fMRIを使ってかなり詳しく調べられています。実際、「話す」を担当するブローカ野や「聞く」を担うウェルニッケ野の発見に始まり、近年では左下前頭回から左運動前野は文法処理に関わっているとされるなど、色々進展はあります。ただし、言語で重要な「何を話したいか」という動機の部分は、意識の問題も絡むため解明が困難です。また、各部位が何をどのように処理してどこに送っているのかについても不明瞭な点が多いです。

  最近ではディープラーニング(深層学習)ベースの「言語モデル」がたくさん発表されて、自然な文章の生成ができつつあります。有名なものには、Recurrent Neural Network(RNN)などがあります。もっとも、ここでいう言語モデルは「ある文章がどれだけ自然か」の評価方法のようなもので、一番重要な「何を話したいか」という部分のモデルはありません。