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 今回からは、脳の代表的な部位に対して、いかにして計算機で再現するかを考えていきます。初めに取り上げるのが視覚野です。

 視覚野の働きを再現するときの主な方針としては、以下のような特徴の実現を挙げることが多いようです。

  • レチノトピー(retinotopy)
  • 階層的な特徴抽出
  • スパースネス

 言うまでもなく、この3つで視覚野のすべてを説明できるわけではありませんが、こうした特徴のあるニューラルネットワークなどを利用すると、おおむね良い結果が得られるので、方針としては悪くありません。実際の視覚野の特徴については、本連載の第7回で扱いましたので、必要に応じて併せてご覧ください。

視覚野の特徴的な構造

 まずは、動物(主に哺乳類)の視覚野の構造を簡単におさらいします。視覚野の大事な特徴の1つに、特定の視覚刺激にだけ反応する神経細胞(ニューロン)が集まった「コラム」という構造があります。隣り合ったコラムは、少しだけ違う刺激に反応します。言い換えると、似たような処理をするコラムは同じような場所に集まっているわけです。また、網膜上の細胞の位置関係は、それにつながる視覚野のコラムの位置関係に反映されており、このことを「レチノトピー」と呼びます。